『フェラーリ』現実逃避のレースかそれとも現実打破か?

フェラーリ(2023)
Ferrari

監督:マイケル・マン
出演:アダム・ドライバー、ペネロペ・クルス、シャイリーン・ウッドリー、サラ・ガドン、ジャック・オコンネルetc

評価:70点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

7/5(金)よりマイケル・マン新作の『フェラーリ』が公開される。マイケル・マンは『フォードvsフェラーリ』の製作総指揮に入っていることで知られるのだが、まさか本人自ら別のフェラーリ映画を放ってくるとは思いもよらなかった。試写で一足早く見させていただいたのでレビューしていく。

『フェラーリ』あらすじ

マイケル・マン監督がアダム・ドライバーを主演に迎え、イタリアの自動車メーカー・フェラーリ社の創業者エンツォ・フェラーリを描いたドラマ。ブロック・イェーツの著書「エンツォ・フェラーリ 跳ね馬の肖像」を原作に、私生活と会社経営で窮地に陥った59歳のエンツォが起死回生をかけて挑んだレースの真相を描く。

1957年。エンツォ・フェラーリは難病を抱えた息子ディーノを前年に亡くし、会社の共同経営社でもある妻ラウラとの関係は冷え切っていた。そんな中、エンツォは愛人リナとその息子ピエロとの二重生活を妻に知られてしまう。さらに会社は業績不振によって破産寸前に陥り、競合他社からの買収の危機に瀕していた。再起を誓ったエンツォは、イタリア全土1000マイルを縦断する過酷なロードレース「ミッレミリア」に挑む。

妻ラウラをペネロペ・クルス、愛人リナをシャイリーン・ウッドリーがそれぞれ演じた。2023年・第80回ベネチア国際映画祭コンペティション部門出品。

※映画.comより引用

現実逃避のレースかそれとも現実打破か?

レース映画といえば、レーサー、エンジニア、経営層が一蓮托生しながら優勝を目指していく熱く燃える作品をイメージする。『フェラーリ』は熱いアクション映画、サスペンス映画の巨匠マイケル・マンだけに男臭いドラマを期待するだろう。しかし、本作は意外なアプローチから描かれる。

1947年に創設し、10年後。会社は業績不振で破綻の危機に瀕する。息子は亡くし、妻との関係は冷え切っているだけではなく愛人の存在がバレて絶望的な状態に陥ったエンツォ・フェラーリ。とはいえ、経営者として弱弱しい姿を魅せるわけにもいかない。そこで会社の命運を賭けて過酷なレース「ミッレミリア」に挑む。

経営者というものは、時に平社員には理解できないような奇行を冒す必要がある。誰にも相談できず、ただ自分を信じてアクションを起こす。それは傍から見ると「現実逃避」のように思える。だが、本人にとっては「現実打破」の手段である。本作は、その宙吊りの中で葛藤するフェラーリを捉えている。レースも前途多難で、事故の瞬間を執拗に描いていく。事故って場外に投げ出されても、致命的な故障が起きても、なんとかコースへ戻ろうとする泥臭さがフェラーリの心理と重なる作りとなっているのだ。マイケル・マンの意外な関心のベクトルを知れた意味で興味深い作品であった。
※映画.comより画像引用

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