『Universal Language』もしもウィニペグがペルシャ語圏になったら?

Universal Language(2024)

監督:マシュー・ランキン
出演Rojina Esmaeili,Saba Vahedyousefi,Sobhan Javadi,Pirouz Nemati etc

評価:90点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

カンヌ国際映画祭監督週間で鬼才マシュー・ランキンの新作『Universal Language』が上映された。マシュー・ランキンといえば、カナダ・ウィニペグ出身の監督で『The Twentieth Century』の毒々しいタッチからガイ・マディンの後継者ではと囁かれている。そんな彼の新作はまた奇妙な作品に仕上がっていた。

『Universal Language』あらすじ

Two women find frozen cash, try to retrieve it. A tour guide leads confused tourists around Winnipeg sites. A man quits his job, visits his mother. Storylines intertwine surreally as identities blur in a disorienting comedy.
訳:二人の女性が凍結された現金を見つけ、それを取り戻そうとする。ツアーガイドが混乱する観光客をウィニペグの名所を案内する。仕事を辞め、母親を訪ねる男。ストーリーが不気味に絡み合い、アイデンティティが曖昧になる混乱コメディ。

IMDbより引用

もしもウィニペグがペルシャ語圏になったら?

先生が教室に入り将来の夢を子どもたちに聞いて回る。『友だちのうちはどこ?』『ギャべ』のような牧歌的な空気、フィルムのような質感が画を支配する。登場人物の言語はフランス語だったりするのだが、映画を追っていくとカナダのウィニペグだというのにペルシャ語になっている。肉屋やビンゴ会場の文字がペルシャ語仕様になっており、登場人物もイラン映画のような振る舞いをする。その中で、氷の中にお金を見つけた人の話や母親を尋ねる男の話、わちゃわちゃと市民が街を歩き回る話が交錯していく。

ウィニペグは英語やフランス語、その他民族の言葉が行き交う場所である。その複雑さをペルシャ語という補助線を用いて説明する、一歩間違えれば文化盗用になりかねない演出となっている。しかしながら、完璧にイラン映画の質感の再現に特化することによって、愛情として昇華させることに成功している。このペルシャ語の働きは『デッドデッドデーモンズデデデデストラクション』における宇宙人から見た地球人の役割に近いものを感じ、ウィニペグの特異さを強調する演出として機能しているといえる。

映像面でいえば、バキバキにショットが決まっている。例えば、オフィスの場面でおっさんの対話を切り返しで描く際に、中央の肖像画を共通させることで、MAD動画のような切り返しが実現できている。他にも、肉屋や手紙の保管所などの舞台造詣がウェス・アンダーソンさながらの可愛らしく洗練されたものに仕上がっており、とても楽しく観ることができた。久しぶりに「観たことのないような映画」に出会えたのであった。