あやまち(2023)
L’Été dernier
評価:75点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
昨年のカンヌ国際映画祭に出品されたカトリーヌ・ブレイヤ新作”L’Été dernier”が邦題『あやまち』としてPrime Videoにやってきたので観た。本作はデンマーク映画『罪と女王』のリメイクである。カトリーヌ・ブレイヤ自体は初めてで、単なる女性監督によるエロ映画だと思って期待していなかったのだが、これが思いのほか面白かった。
『あやまち』あらすじ
パリの高台にある一軒家で夫ピエールと娘たちと暮らす優秀な弁護士アン。ある日、ピエールの前妻との間にできた17歳の息子テオが引っ越してくる。家族に馴染もうとしないテオにアンは思いやりを持って接するが、次第にテオと情熱的な関係となり、アンはキャリアと家庭生活を危険にさらすことになる・・・
※Prime Videoより引用
わたしは夫の息子に欲情する
パリの高台に住むピエール(オリヴィエ・ラブルダン)とアン(レア・ドリュッケール)は倦怠期気味である。セックスをするものの、イマイチ乗れない。そんなある日、ピエールの前の妻との間にできた息子テオがやってくる。彼は不良であり、ピエールとの関係は悪い。ブレイヤは、危険で魔性の魅力を持つテオ(サミュエル・キルヒャー)をまるで『ベニスに死す』のタッジオがごとく耽美的に捉える。タバコの煙に包まれ、うつむきスマホをいじり、ピエールの言うことを受け付けない。怒ったピエールがスマホを取り上げると、ギロッと鋭い眼光を飛ばす。これだけで一筋縄ではいかないことが嫌というほど突き付けられる。
では、倦怠期に嫌気を差したアンはSっ気たっぷりなテオの言いなりになるのか?そうはならない。例えば、川でテオがアンを沈めようとすると、彼女はやり返すのだが、殺す気で沈めて来るのだ。かつて、中絶手術に失敗し、子どもを授かることのできなかった彼女は「母親」としての力関係をテオに提示しつつ、若かれし頃の性欲を思い出すかのようにテオと性的関係を結んでいく。その絶妙な力関係の緩急が興味深い。
特にちびっ子たちの扱いが慧眼である。ちびっ子たちの前ではアンもテオもピエールも平静を装う。緩衝地帯として機能している。しかし、ひとたび陰に入ればテオはアンに激しい性的関係を迫り、そこで思わぬ羞恥プレイへとなだれ込むのだ。それに狼狽しつつも弁護士として「慣れてますから」と冷たく対処していく。
初のブレイヤ作品として良い出会い方をしたのであった。