【ゴダール特集】『ブリティッシュ・サウンズ』わかりやすい搾取の構造

ブリティッシュ・サウンズ(1969)
BRITISH SOUNDS

監督:ジャン=リュック・ゴダール(ハンス・リュカス)、ジャン=アンリ・ロジェ、ジガ・ヴェルトフ集団etc

評価:80点

ジガ・ヴェルトフ時代のゴダール強化週間として『ブリティッシュ・サウンズ』を観た。ジガ・ヴェルトル集団時代の作品の中では最もわかりやすく入門的な一本といえる。

『ブリティッシュ・サウンズ』概要

<第一部・ブリティッシュ・サウンズ> 映像=オックスフォードの工場でのMGスポーツカー製造の組み立て作業。音=「共産党宣言」「賃労働と資本」「賃金・価格及び利潤」からの引用。 <第二部ミリタント・サウンズ> 映像=裸の女性。音=女性に対する男性の専制を告発する女性活動家の声。どのような関係における専制かと問う男性の声。 <第三部・資本の音> 映像=テレビのアナウンサーと孤独な労働者。音・ウィルソン、ヒース、ポンピドー、ニクソン等の演説の抜粋。低いささやきの声が、未組織労働者に団結とストライキへの決起を呼びかける。 <第四部・労働者の音> 映像=マルクシスト労働者の集会。音=労働者たちの言葉。賃金について、利潤について、解雇問題について、能率給についてなど。 <第五部・学生の音> 映像=学生たちが、ビートルズの唄を批判しながら替歌をつくる。音=帝国主義と対決する映像と音を創出するためのいくつかの理論。 <第六部・革命の音>映像=血まみれの手が、雪と泥のなかから真紅の旗をつかみかかげる。音=全世界の革命歌。

映画.comより引用

【わかりやすい搾取の構造】

驚いたことに、本作で紹介される資本主義のメカニズムはまるでYouTubeの経済解説動画並みに分かりやすく整理されている。

我々は労働力を提供しているが、それは何を生み出しているのだろうか?本当に製品なのだろうか?ゴダールは「生活のために労働力」を差し出すことは、生活を人質に取られていることであり、それによって生み出されたものは製品ではなく賃金にすぎないと、横移動で工場を捉えながら語る。

このベルトコンベアのような横移動は『ヌーヴェルヴァーグ』における資本主義批判や『ウイークエンド』における交通事故描写へと応用されている。本作は、ゴダールなりに経済を分析し、その後の作品へ応用させていく原石として機能しているといえよう。