【CPH:DOX2023】『The Super 8 Years』ノーベル文学賞作家アニー・エルノーが監督したドキュメンタリー

The Super 8 Years(2022)
原題:Les Années Super 8

監督:アニー・エルノー、ダヴィッド・エルノー=ブリオ

評価:50点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

CPH:DOX2023でアニー・エルノーのドキュメンタリーが上映されていた。アニー・エルノーといえば2022年にノーベル文学賞を受賞した作家。日本では年末に「事件」を映画化した『あのこと』が公開されたこともあり話題となった。そんな彼女が息子と一緒に初監督作品を発表していた。それが『The Super 8 Years』である。実際に観てみた。

『The Super 8 Years』概要

“En revoyant nos films super huit pris entre 1972 et 1981, il m’est apparu que ceux-ci constituaient non seulement une archive familiale mais aussi un témoignage sur les goûts, les loisirs, le style de vie et les aspirations d’une classe sociale, au cours de la décennie qui suit 1968. Ces images muettes, j’ai eu envie de les intégrer dans un récit au croisement de l’histoire, du social et aussi de l’intime, en utilisant mon journal personnel de ces années-là.”- Annie Ernaux
訳:「1972年から1981年にかけて撮影された我が家のスーパー8フィルムを見直したとき、それらは家族のアーカイブであると同時に、1968年以降の10年間におけるある社会階級の嗜好、余暇活動、ライフスタイル、願望を示す証言であることに気づきました。私は、これらのサイレント画像を、歴史、社会、そして親密さの交差点にある物語に統合したいと思い、当時の個人的な日記を使いました。

Allocinéより引用

ノーベル文学賞作家アニー・エルノーが監督したドキュメンタリー

近年、フッテージを用いたドキュメンタリーが流行っている。最近だと、ルーマニア人とイラン人の文通に当時の映像をつけて、現実の手触りを再現しようとした『BETWEEN REVOLUTIONS』やフッテージからリトアニア史を語る『ミスター・ランズベルギス』が印象的であった。今の時代、簡単に昔のフッテージにアクセスできたり、編集が容易になってきているせいだろうか?素材を加工して何かを語る手法が注目されているように感じる。

アニー・エルノーは自分の身に起きたことを虚構を介して描く作家である。また「事件」では、事件当時の質感を再現するために、文献引用を行っていた。自分の過去とそれを紐付ける資料。それを虚構に織り交ぜることでリアリティある物語を紡いできたと分析することができる。そのため、彼女がフッテージを用いて自分と歴史の関係性を語ろうとするのは全く不思議ではない。むしろ必然的だったといえる。

ただ、残念なことにあまりにもホームビデオというか個人的な話なように思えて、アニー・エルノーの作品を幾つか触れてきた身としては物足りなさと退屈さを感じてしまった。

※MUBIより画像引用