#マンホール(2023)
監督:熊切和嘉
出演:中島裕翔、奈緒(本田なお)、永山絢斗etc
評価:50点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
第73回ベルリン国際映画祭に出品された熊切和嘉監督最新作『#マンホール』。日本でワンシチュエーションサスペンスってあまり遭遇しないイメージがある。あっても、いかにも低予算で作りましたという体裁だと思う。しかし予告編を観ると、洋画を観ているようなリッチな質感の修羅場が楽しめそうな気がした。実際に観てみた。本作はネタバレ厳禁な作品かつ、非常に書くのが難しいタイプの作品。なので軽く感想を書いておくので、ピンと来たら映画館へ行くことをオススメする。
『#マンホール』あらすじ
「Hey! Say! JUMP」の中島裕翔が6年ぶりに映画主演を務め、マンホールに落ちてしまった男の苦闘を描いたシチュエーションスリラー。「ライアーゲーム」「マスカレード・ホテル」シリーズの岡田道尚によるオリジナル脚本で、「私の男」「海炭市叙景」の熊切和嘉監督がメガホンをとった。
勤務先の不動産会社で営業成績ナンバーワンの川村俊介は、社長令嬢との結婚も決まって将来を約束されていた。しかし結婚式の前夜、渋谷で開かれたパーティで酩酊し、帰り道にマンホールの穴に落ちてしまう。深夜、川村は穴の底で目を覚ますが、思うように身動きが取れず、スマホのGPSは誤作動を起こし、警察に助けを求めてもまともに取り合ってもらえない。なんとか連絡が取れた元カノに助けを求めることができたが、自分のいる場所がどこかわからない川村は、「マンホール女」のアカウントをSNS上で立ち上げ、ネット民たちに場所の特定と救出を求めるが……。
中島が主人公・川村役を演じるほか、川村の元カノ役を奈緒、川村の同期社員役を永山絢斗がそれぞれ演じる。
一見すると簡単に解決しそうだが……
飲み会終わり、フラフラと歩いていたら穴に落ちる。イケイケサラリーマンの川村俊介(中島裕翔)は目を覚ますと、穴から出ようと奮闘する。しかし、その行動ひとつひとつが不可解だ。明らかにマンホールだと分かっているのに、「穴」だとずっと言っている。警察よりも先に友人たちに電話をかけ、場合によってはキレ始める。しまいには、SNSでアカウント「マンホール女」を作り、インターネットの集合知で自分を助けてもらおうとする。後にひとつずつ行動原理や彼の行動心理に説得力が与えられる事象が展開されるのだが、どうももどかしい。我々観客が思った方向に行ってくれないところに本作の面白さはあると思う。そして、この妙な緊迫感を持たせる中島裕翔の演技が良い。確かにオーバーアクションではある。個人的に本作序盤は全然マンホール内で汚れない彼の姿に疑問を抱いたし、なんなら藤原竜也で観たかったなと思っていた。しかし、映画が進めば進むほど、中島裕翔演じる優秀イケメンサラリーマンの別の顔が現れていく。オーラレベルから全く違ったものが浮かび上がるのである。終盤になると、もうそこには中島裕翔はいなかった。俳優とは、存在しない誰かにいかに成り代わるかが重要である。アイドルの場合、アイドルとしてのイメージがついてしまっている。それを映画の中で払拭するのは大変難しいことである。しかし、彼は見事アイドルの枠組みから出た迫真の演技を画面に叩きつけた。映画自体は、おそらく1つのワンシチュエーション映画と、とある日本映画を念頭に置いているだろう。後者の要素が映画にマッチしていないように感じた上、くどさを抱いたためイマイチな作品であったが、彼の演技だけは一級品だったといえよう。
※映画.comより画像引用