白衣の男(1951)
THE MAN IN THE WHITE SUIT
監督:アレクサンダー・マッケンドリック
出演:アレック・ギネス、ジョーン・グリーンウッド、セシル・パーカー、マイケル・ガフetc
評価:60点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
アマゾンプライムビデオに『ラベンダー・ヒル・モブ』と併せてイーリング・スタジオ製作のコメディ映画『白衣の男』が配信されていた。これが興味深い作品であった。
『白衣の男』あらすじ
繊維工場の研究室で試験管の洗浄係をしているSidney Strattonは、汚れにくく丈夫な新しい生地を作るために密かに努力している。多くの波乱の後、彼は成功する。 彼の雇用主は、発明を開発するためのお金と材料を与える。しかし、この革新的なテキスタイルの商業化は、テキスタイル産業の終焉を意味するのである。労働組合と紡績工場の所有者は、この大惨事を回避するために力を合わせた…
新素材は世界を救わない?
繊維工場の研究室に視察が入る。謎の器具に対して「これはなんだね?」と質問が投げかけられるが誰も答えられない。ゴミを運んでいる男が物陰から覗く、彼こそがその器具の使用者であり、多額の金を使って独自の研究を行っていたのだ。事態がドンドン大きくなっていくが、その器具の使用者がすぐそばにいるにもかかわらず気づかれない修羅場の描き方がスタイリッシュで一気に観る者を映画の世界に引き込む。結局、彼は転職することになる。繊維工場に潜入し、器具説明のプロフェッショナルをアピールして遂に研究環境を手に入れる。そしてなんとか新素材を開発するのだが、新素材によって市場のルールが変わってしまうことに困惑する者たちによって潰されそうになる。
本作はドラマとして幾つか興味深いものがある。まず、繊維工場の下っ端として働くことになった主人公が、休憩時間も仕事をしようとすると、女性社員から「勝ち取った権利だから休憩よ」と言われてしまう場面。これは労働者が折角手に入れた権利なのに、それを放棄することは前時代へと逆行することだから罪であることを端的に示した場面だ。休むことも仕事であり、それを無視することは怠慢だという理屈を映画で提示してくるところが面白い。日本だと、コロナ禍になってからは大分価値観が変わってきたと思うが、休みを返上してまでも労働することが美徳だと誤解されてきた面もあり、それがダンピングにも繋がってきたところもあるので目から鱗な場面と言える。
また、新素材登場によって揉める展開は、今におけるAI描画ツールがイラストレーターから仕事を奪うのではと物議を醸している現状と似ている。便利にしようとする、合理化しようとすると、不便で暮らして者から反発をくらう。それとどのように折り合いをつけるのか?この映画は半世紀以上前の作品でありながら今にも通じるテーマが語られており面白かった。
※MUBIより画像引用