【 #死ぬまでに観たい映画1001本 】『彼女について私が知っている二、三の事柄』ゴダールは二、三の事柄を「映え」で凝縮する

彼女について私が知っている二、三の事柄(1966)
2 OU 3 CHOSES QUE JE SAIS D’ELLE

監督:ジャン=リュック・ゴダール(ハンス・リュカス)
出演:マリナ・ヴラディ、アニー・デュプレー、ロジェ・モンソール、ラウール・J・レヴィ、ジャン・ナルボニ、ジュリエット・ベルトetc

評価:45点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

「死ぬまでに観たい映画1001本」掲載の残っているゴダール映画『男性・女性』と本作を観た。『男性・女性』は銃によるアクションや文字アートが相変わらずカッコいいなと思いつつも、『はなればなれに』の焼き直しかなと思ってしまいあまり感想が思い浮かばなかった。映画歴15年近くなるけれど、やっぱりゴダールはよくわからないなと感じた。『彼女について私が知っている二、三の事柄』も同様に、よくわからない映画であり、あまり好きではないのだが少しばかり書くことがあったので感想を頑張ってみることにする。

『彼女について私が知っている二、三の事柄』あらすじ

「メイド・イン・USA」と同時に製作されたゴダール監督作品。4000世帯を収容するパリ郊外の団地で夫と子供ふたりと暮らすジュリエット。夫にとって自慢の妻だが、昼間は売春をして買い物を楽しんでいる主婦のひとりだった。アメリカがパリにもたらす夢の虚像、68年の革命への予感を孕んだ本作は、大島渚監督「絞死刑」との作品交換で日本初公開された。

映画.comより引用

ゴダールは二、三の事柄を「映え」で凝縮する

ゴダール版団地妻と言われる本作は、夫に内緒で売春する女性を描いている。子どもを保育所のようなところに預け、買い物をしカフェでダラダラとし、時に売春をして暮らす女性の日常を映えの画で演出している。主婦は仕事をしないのか?突然インタビューが始まり、仕事がないと答える。本作は、男が仕事をしている間女は暇をしている。仕事をしようにも仕事がないことを告発している映画のようだ。ジェンダー問題が激しく議論されている今観ると、『男性・女性』以上に男らしさ/女らしさが強調されており観ていてあまり良い気分がしない。それは男がビールを飲んで女がコーラを飲む演出にも現れているし、主婦は買い物を楽しんだりカフェで暇をしたりするという表現にも現れており、家事の重さが軽視されているように思えている。時代が時代ということで目を瞑るとしても、ベトナム戦争やアメリカとフランスとの関係を、本の引用で語ってしまうことで本作はゴダールが言いたい放題愚痴を言っているだけに見え、焦点が定まっていない。これにより、複数の社会問題をインテリ的引用と映えのある画でまとめてしまっている雑さが目立ってこれは厳しい映画だなと感じるのだ。

それでも保育所に子供を預ける場面の長回しは面白い。帽子を被った男が扉から出てきて、歩く。別の扉から女が出てきて真っ直ぐ歩いていくと、別の扉からひょっこり例の男が姿を現す。この複雑な動きは観ていて楽しいし、真似したくなる。でも今観るにはNOT FOR MEであった。

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※MUBIより画像引用

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