ドント・ブリーズ2(2021)
Don’t Breathe 2
監督:ロド・サヤゲス
出演:スティーヴン・ラング、ブレンダン・セクストン三世、マデリン・グレース、ボビー・スコフィールド、アダム・ヤングetc
評価:60点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
2016年に話題となったホラー映画『ドント・ブリーズ』まさかまさかの続編がやってきました。目が見えないのに最強の老人の手によって血祭りに挙げられる若者を描いた異色作。一発芸的面白さを続編はどう乗り越えるのかが課題となってきます。しかし、予告編を観ると主人公はスティーヴン・ラング演じる老人ではありませんか。前作を思い返すと、変態爺さんだった記憶があり、ヒーローに持ってくるにはなかなか難しい状況。いつもであれば公開前にインフルエンサーたちの熱い評がTwitterを賑わせるのですが、それが全く確認できなかった。一抹の不安を抱えて観たのですが、これが厄介な映画でありました。
『ドント・ブリーズ2』あらすじ
孤独な盲目の老人の家に押し入った若者たちが思いがけない恐怖を味わうさまを描いて全米スマッシュヒットを記録し、日本でもSNSを中心に口コミで評判が広がりロングランヒットとなったホラー「ドント・ブリーズ」の続編。あれから8年。盲目の老人は、惨劇の起こった屋敷でひとりの少女を大切に育てていた。少女と2人だけの生活を誰にも邪魔されないよう、静かに暮らしている老人だったが、少女に向ける表情には言いようのない不気味さが漂っていた。そんな2人の前にある時、謎の武装集団が現れる。彼らが少女を狙って屋敷に踏み入ってきたことから、老人の狂気が再び目を覚ます。前作でフェデ・アルバレス監督とともに脚本を手がけたロド・サヤゲスがメガホンをとり、前作のアルバレス監督も製作・共同脚本として参加。プロデューサーのサム・ライミも続投し、盲目の老人をスティーブン・ラングが再び演じている。
ドント・ブリーズでなければ良かったけど…
あの盲目の老人はあの事件の後、少女と一緒に暮らしていた。アメリカには一定数存在する、学校に通わせず独自の教育を施す方針で息苦しい人生を送っていた。そんなある日、少女にストーカーの影がちらつき、『わらの犬』かと思う程老人の家が包囲されてしまう。
そうです。前作は侵入者側から恐怖を描いていたのだが、今回は被害者側から恐怖が描かれるのだ。とはいってもそれだと、単なるよくあるサスペンスである。それに、盲目の者の家に誰かが侵入する恐怖を描く作品は『暗くなるまで待って』、『見えない恐怖』で既に描かれている。前作はその逆をやって見せたので面白かった。元に戻したら陳腐化するのは明白である。
だが、ここで切れ味抜群の狭い空間での回避劇が始まる。最強の老人が外にいる状態で、暴力集団がにじりよるように少女を探しに二階へ向かう。少女はベッドの下、引き出しの下、さらにはメタルギアソリッドのように1階と2階の空間の狭間にぶら下がりながら回避する。これを長回し(ひょっとすると擬似かもしれませんが)で舐めるように撮る。
侵入する側/される側の恐怖を巧みに切り替えることで、生々しい人間らしい緊迫感を生み出す。それでもって、暗闇での戦いは「シティーハンター」における暗闇の中で跳弾の僅かな光で敵の位置を確認して仕留めるような、繊細で手汗握るアクションが展開される。
このサスペンスの鶴瓶打ちに、興味がそそられます。
一方で、『ドント・ブリーズ』でも若干危なかった「盲目」という側面が軽視されているように感じた。スティーヴン・ラングの動きが明らかに目が見えている人の動きなのだ。動きに迷いがなさすぎるところが盲目である必要性を希薄にさせ、「面白いけれども『ドント・ブリーズ』でやる話ではないな」と思ってしまうのです。もちろん、前作との反転として老人が植物室のガラス屋根に落ちるといった関連ポイントもあるのですが、それは小ネタ程度に留まっており、シリーズの映画という説得力がありません。
そして困ったことに終盤の『ブレードランナー2049』を意識したアクション。銃弾で光を灯したり、煙の演出は良かったものの、穴を使いこなせておらず消化不良であった。
なんか切れ味抜群なフィルムノワール映画になりきれていないイメージが強かったです。
※映画.comより画像引用