エル・ノルテ/約束の地(1983)
EL NORTE
監督:グレゴリー・ナヴァ
出演:ザイデ・シルヴィア・グティエレス、デヴィッド・ヴィラルパンド、アーネスト・ゴメス・クルス、アリシア・デル・ラーゴetc
評価:80点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
「死ぬまでに観たい映画1001本」に掲載されている移民映画『エル・ノルテ/約束の地』を観ました。本作は日本では知名度が低い作品ですが、入手難易度が低ければ日本の中学高校の授業で観せていてもおかしくない移民ロードムービーでした。
『エル・ノルテ/約束の地』あらすじ
中米グァテマラ北部に住むインディオの小作人たちは、地主の圧制に苦しみながらもいつかは自由な暮らしを夢見ていた。エンリケ(デイヴィッド・ヴィラルパンド)とロサ(ザイーデ・シルヴィア・グチエレス)の兄妹も例外ではなく、エル・ノルテ(北=アメリカ)への思いを募らせていた。そんなある夜、彼らの父は村はずれの廃墟での密会に出席したところ、政府軍によって惨殺され、また母も軍隊に連行されたまま行方不明になってしまう。身の危険を感じた兄妹は、村を捨て北へと行くことを決意する。メキシコのティファナに到着した2人は、国境案内人に騙され密入国に失敗するが改めてメキシコに戻ったエンリケは、村人ラモンの紹介でライモンドという案内人をたより、ドブネズミが這い廻る地下水道をくぐりぬけ苦難の末アメリカ入国に成功する。ロスで生活を始めた2人は、初めこそこの国の社会システムに戸惑うが、やがてエンリケはウェイターの、ロサは家政婦の仕事を見つけ、生活は次第に豊かさを増し充実してゆくのだった。折からエンリケはシカゴでの仕事を依頼されるが、妹の同行が許されないこともあり、一旦はこの仕事を断るが、エンリケの出世を妬む同僚の密告で彼の勤めるレストランに移民局が踏み込んで来たことにより失職、改めてシカゴ行きを考慮する彼に、ロサがチフスで重体との報が入り岐路選択に苦悩する。病床で目覚めたロサは、隣にいる兄の姿を認め安らかに息を引き取るのだった……。
※映画.comより引用
移民から見たアメリカン・ドリーム
グアテマラのプランテーションで働く家族は毎日コーヒー豆を摘みながらもいつか自由な暮らしができることを夢見ていた。ある日、父が密会に参加していたせいで政府軍に襲撃され、父は惨殺、母は誘拐されてしまう。命からがら脱出した兄妹は夢の国アメリカを目指し、北へ北へと旅をする。メキシコからアメリカへの国境はザルで、抜け穴さえ見つけられれば簡単にアメリカに渡れる。横暴な国境警備隊や曲者ぞろいのメキシコ人に翻弄されながらも二人は逞しくアメリカに辿り着く。今やSNSの発達でアメリカの影が痛いほど伝わってくるのだが、1980年代はアメリカン・ドリームが信じられていた時代だ。移民から観たら摩天楼立ち並ぶ眠らない街はユートピアのように見えるだろう。そして人も優しく、言葉が通じなくても「お前、働かないか?いくら欲しい?一日これくらいあげるよ。」と豪快な勧誘でホテルマンになれたり、「英語習いたい?だったらフリースクールに行けば良いのよ。何故タダかって?そんなのはどうでもいいじゃん」と英会話教室に通えたりする。確かにその豪快さ故に、「インディアンっぽい髪型ね」と差別的な発言も飛び交うのですが、ひたすら自由で陽気で優しいアメリカにユートピアを感じます。あの時代のアメリカが持っていた心の広さが伝わってきます。
さて、妹は裁縫の仕事で知り合った女性と家政婦の仕事につく。ここで留学したことがある人なら共感度120%のシーンがやってくる。マダムから洗濯機の使い方を教わる二人。しかし、ボタンが多くてよく分からない。とりあえず「YES, I UNDERSTAND」と言ってしまう。しかし、いざ使おうとなると全く分からない。ボタンを押すと不気味な動きをする。困った挙句に手洗いし始める展開は、留学序盤で「安易なYESは命取り」と知る様子に一致し懐かしさを覚えます。
本作は非英語話者が必死に英語を学んでアメリカで自由を謳歌する話なので、中学高校生にピッタリな作品だ。特に海外留学したい人は観て損はありません。美しい景色に、中南米の事情が学べる、確かに「死ぬまでに観たい映画1001本」掲載も納得な映画でした。
※Quad Cinemaより画像引用
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