パピチャ 未来へのランウェイ(2019)
Papicha
監督:ムニア・メドゥール
出演:Lyna Khoudri,Shirine Boutella,Amira Hilda Douaouda etc
評価:70点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
第72回カンヌ国際映画祭《ある視点》部門に出品されたフランス・アルジェリア合作映画『パピチャ 未来へのランウェイ』を観ました。
『パピチャ 未来へのランウェイ』あらすじ
1990年代のアルジェリア内戦(暗黒の10年)を背景に、ファッションデザイナーを志す少女の視点を通して、イスラム原理主義による女性弾圧の実態を描いた人間ドラマ。アルジェリアで17歳まで過ごし、これが長編映画監督デビュー作となるムニア・メドゥールが、自身の経験から生み出した。2019年・第72回カンヌ国際映画祭ある視点部門で上映されて称賛を集めるも、本国アルジェリアでは当局によって上映禁止となった。90年代、アルジェリア。ファッションデザイナーを夢みる大学生のネジャマは、ナイトクラブで自作のドレスを販売していたが、イスラム原理主義の台頭により、首都アルジェでは女性にヒジャブの着用を強要するポスターがいたるところに貼りだされていた。そんな現実に抗うネジュマは、ある悲劇的な出来事をきっかけに、自分たちの自由と未来をつかみ取るため、命がけともいえるファッションショーの開催を決意する。
暴力は突然起こるものだ
カンヌ国際映画祭に出品されるような欧米資本の入ったアフリカ映画は『La Source des femmes』や『Yomeddine』社会問題の周知が前面に出ているせいか、割と結論を置きにいっている印象が強く、映画として観た際に新鮮さがなく惜しいイメージが強い。『パピチャ 未来へのランウェイ』の場合、一見そのような傾向を匂わせておきながら、鋭い演出が光る作品となっている。
冒頭、車の中で若い女性が音楽を聴きながら盛り上がっていると、兵士に呼び止められる。急いでヒジャブを被り、音楽を消し平静を保とうとするのだが、兵士は威圧的な態度で、「なんでこんな遅くに女がいるんだ」と車をバンバン叩く。取り調べが終わると、「行け!」と言われるのだが、なかなかエンジンがかからない。この表現はクリシェであるのだが、本作における映画的ルールが定義される印象的な場面だ。本作では、予兆なく暴力が襲いかかる。フランス語で授業を行う教室に、突然黒いヒジャブを被った女性たちが押し寄せ、非国民だと罵り授業を破壊する。突然、人が死ぬ。この国では、死が隣り合わせなことを映画ではどうしても理論的に因果関係を提示して描いてしまうものを抑えて、暴力が描かれているのだ。それが、街に張り出される不気味なポスターに伝播し、ファッションショーという煌びやかな世界が微かな希望のように見える作りとなっている。だからこそファッションショーが開催できるのかどうか?というテーマにハラハラドキドキさせられます。映画祭シーズン故に中々注目されにくい作品ではありますが、これは観て損はありません。
※映画.comより画像引用
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