【ネタバレ】『マーティン・エデン』血の轍を歩む者は孤高に酔いつぶれる

マーティン・エデン(2019)
Martin Eden

監督:ピエトロ・マルチェッロ
出演:ルカ・マリネッリ、ジェシカ・クレッシー、デニーズ・サルディスコetc

評価:40点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

第76回ヴェネツィア国際映画祭で『JOKER/ジョーカー』のホアキン・フェニックスをおさえ、男優賞を仕留めたルカ・マリネッリ主演作『マーティン・エデン』がようやく公開された。今年は、『野性の呼び声』とジャック・ロンドン原作の映画が2本も日本でお披露目されている。彼の半自伝的作品『マーティン・イーデン』は今のWEBライター、ブロガー界隈にも通じるマウント、嫉妬、憎悪を宿しており映画ブロガー歴12年の私にとって生涯のバイブルである。予告編を観る限り傑作の香りがしたが、期待外れであった。ネタバレありで感想を書いていく。

『マーティン・エデン』あらすじ


ハリソン・フォード主演で映画化された冒険小説「野性の呼び声」などで知られるアメリカの作家ジャック・ロンドンの自伝的小説を、イタリアを舞台に映画化。イタリア・ナポリの労働者地区に生まれた貧しい船乗りの青年マーティンは、上流階級の娘エレナと出会って恋に落ちたことをきっかけに、文学の世界に目覚める。独学で作家を志すようになったマーティンは、夢に向かい一心不乱に文学にのめり込むが、生活は困窮し、エレナの理解も得られることはなかった。それでも、さまざまな障壁と挫折を乗り越え、マーティンは名声と富を手にするまでになるが……。2019年ベネチア映画祭のコンペティション部門に出品され、主人公マーティンを演じたルカ・マリネッリが男優賞を受賞。そのほか、イタリアのアカデミー賞と言われるダビッド・デ・ドナテッロ賞で脚色賞を受賞するなど高い評価を獲得。
映画.comより引用

血の轍を歩む者は孤高に酔いつぶれる

確かにルカ・マリネッリが賞を獲るのは分かる。『JOKER/ジョーカー』のホアキン・フェニックスは『ザ・マスター』と変わらない演技だからだ。ルカ・マリネッリ演じるマルティン・エデン(劇中の発音に合わせた)は、労働者スラムの人間であり富裕層の令嬢エレナ(ジェシカ・クレッシー)に恋をし、彼女に近づく為に学を積み、小説家を目指す。しかし、彼のリアリズムはあまりに暗く受け入れられない。長い間、文と闘いようやく雑誌に作品が掲載される。彼はサバイバーだ。貧しくも、血汗滲む想いを経て勝利を掴む。散々踏みにじってきた資本主義の上層部に復讐を果たすのだが、同時に社会主義の「弱者がひとつになる」思想を見下すようになる。彼の周囲が努力しない無能に見えるのだ。そして、掌を返し賞賛する富裕層と勝利を掴めない無能を軽蔑し、孤高である自分に酔いしれるのだ。勝利の先にある虚無を掻き消すように。クラウス・キンスキーのように暴力的で、目をギョロっとさせ、社会を己を蹂躙するように豹変していくルカ・マリネッリの演技は良かった。

しかしながら、彼が学を積み、富裕層の振る舞いを必死にくらいつき習得する過程や、労働者の世界に属するマルティン・エデンの側面が弱い為、彼の内面に溜め込む憎悪が突発的に見えてしまった。

さらに、本作は感情表現に困れば前衛的なサイレント映像やらセピア色の映像を使い画で技術不足を誤魔化しているように見えてしまい、じっくり血の轍を描く繊細な映画にみせかけて雑な作りとなっているのが残念でした。これでは、あざといというか卑怯な作りにすら見えてしまいます。

オールタイムベスト小説の映画化のハードルは高かった。

※IMDbより画像引用

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