【 #EUフィルムデーズ 】『ヴァトレニ クロアチアの炎』試合すらできないあの時代

ヴァトレニ クロアチアの炎(2018)
Vatreni

監督:エドソン・ラミレス

評価:55点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

EUフィルムデーズ2020のドキュメンタリーパックにフォロワーさんやヨコハマ・フットボール映画祭のスタッフさんからオススメされていた『ヴァトレニ クロアチアの炎』を観ました。サッカー事情は全くの無知なのですが、それでも胸熱な作品だそうです。

『ヴァトレニ クロアチアの炎』概要


ユーゴスラビア連邦からの離脱の引き金となったマクシミールスタジアムでの暴動、泥沼の独立戦争、そして初のワールドカップでの国民の期待と歓喜……。激動の日々を過ごしたクロアチア代表の監督、選手たちが重い口を開いた。
※青山シアターより引用

試合すらできないあの時代

七つの国境、六つの共和国、五つの民族、四つの言語、三つの宗教、二つの文字、一つの国家と形容されるユーゴスラビア。その複雑さから、混沌を極めていた。特に1980年代後半は、ユーゴスラビアという枠組みから離脱しようと激しい内戦状態となっており、サッカーはその戦場として使われてきた。スタジアムの椅子をひっぺ剥がし、敵対勢力を殴る。試合中にグランドに乱入しゲームを破壊する。選手もスポンサーも啀み合い、警察にすら蹴りを入れる荒れ狂った状況が続いていた。そんなサッカーどころではないユーゴスラビアに所属するクロアチアがいかにしてFIFAワールドカップで3位の成績を上げたのかをこのドキュメンタリーは語る。

かなり感情的なドキュメンタリーなので、前半は「1980年代のユーゴスラビアサッカー事情はヤバい」しか言っておらず、それを肉付けする暴動のフッテージを並べているだけの印象を受けた。そして、いかにしてクロアチアが快挙を成し遂げたのかの説明が、「あの選手がよかった」とか「あの空気感が凄かった」とか感情面ばかりを取り上げており全然論理的でないので、クロアチアサッカーファンのためだけの映画に見えてしまうところがある。

ただ、それでも生涯に2得点しか入れられなかった選手が、このW杯で得点を入れた話や、あれだけ分裂していた気持ちが一つの方向へ進み始めた瞬間の高揚感はサッカー素人でも心躍るものがありました。

尚、クロアチアはその後グループリーグ敗退に敗退し続けるのだが、本作が製作された2018年にW杯ロシア大会で過去最高成績の準優勝を果たしている感動的なエピソードもあり、嫌いにはなれない魂のドキュメンタリーと言えよう。

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