鉄路の白薔薇(1922)
LA ROUE
監督:アベル・ガンス
出演:セヴラン・マルス、ガブリエル・ド・グラヴォンヌ、アイヴィ・クロウスetc
評価:85点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
コロナ禍で映画館がやっていないからこそ、『死ぬまでに観たい映画1001本』コンプリートの道を再開させたい!今こそ苦手なサイレント映画に挑戦したいとアベル・ガンスの『鉄路の白薔薇』を観ました。アベル・ガンスといえば、3画面映画でお馴染み『ナポレオン』が有名ですが、サイレント映画に詳しい友人の話によれば入門として『鉄路の白薔薇』を先に観た方がいいとのこと。というわけで挑戦してみました。
『鉄路の白薔薇』あらすじ
第1部「黒の交響楽」フランスの或る小停車場で信号機の故障のため列車が衝突した。同じ鉄道の運転手シジフは現場に赴き母を失った女児ノルマを拾い我が子エリーと共に育てた。十五年の間彼等は兄妹として親しみ、エリーはバイオリン製作を業とし、ノルマは家事を見た。シジフはノルマが日毎に美しくなってゆくのを見て我が子として育てたのにも拘らず彼女に対して恋心を抱くようになった。彼は懊脳の極み飲酒と賭博に耽って金銭を浪費し窮地に陥った。ノルマに同じ想を懸けていた鉄道技師ジャック・ド・ヘルサンはノルマを妻にくれればシジフの家計を助けるというのでシジフは心ならずも涙を呑んでノルマを結婚させる。エリーは或る日家系図を見てノルマが実の妹でないことを発見し、父を責めたが後の祭で如何にもならず父子共に失意の極に達する。シジフは或る日機関車の火夫の過失により蒸気のために火傷し殆ど失明し、機関車を車止めにぶつけて大破させた。 第2部「白の交響楽」失明したシジフは、支線の登山鉄道に転勤し山頂の小屋にエリーと共に住んだ。ノルマはシジフやエリーが懐かしく避暑のためにと山麓の旅宿に投じ秘かにエリーと会った。ド・エルサンは両人の仲を疑いエリーを訪れ嫉妬の余り格闘して終に両人共に死んだ。今は全く盲目となったシジフは悲痛な過去の思い出と現在の不遇に苦しんだが、夫の死後無一文となったノルマがシジフの許に帰って来て父として仕えたので彼は平安に世を去った。
アベル・ガンスが描く機関車トーマス中の人の日常
本作は、きかんしゃトーマスの中の人の映画であった。
冒頭、「じこはおこるさ」と言わんばかりの脱線事故から始まる。駅員は発狂して立ち尽くしているが、このままだと、連鎖事故が起きてしまう。赤ちゃんは草むらに放り出されてしまい、女の人が赤ちゃんを救おうとするのだがすってんころりん転げてしまう。さて、いよいよセカンドインパクトが迫り来る。男は重い重い切替機をうんしょうんしょと動かし危機一髪難を逃れる。アレクサンドル・ドヴジェンコの『武器庫』と並ぶ壮絶な列車事故をまくしたてるようなカット捌きで繋いでいく。
そして物語は幕を開ける。
母を事故で失った赤ちゃんを育てることにしたシジフの物語が始まるのだが、アベル・ガンスは物語を横に放置し、実験的演出と「じこはおこるさ」に前半は集中します。手の平に映像を当て込んでみたり、貨物車の洗車に人を巻き込んだり、早回しにすることで機関車の暴走を表現したり、流線を描く線路の奥から段々と機関車がやってくる様をかっこ良く描いたり、《後光が差す》を映像で表現してみたり、手数の多さを観客に投げつけてくるのです。
後半になると我に帰り失明したシジフとド・エルサンのノルマを巡る愛の物語に集中していくのだが、人が手を繋ぐ様子を影絵のようにして描いていく描写等にイングマール・ベルイマンの片鱗を感じさせる。映画の神とも言えるベルイマンだって、他の映画からアイデアをいただいているんだなということが感じ取れる。
ただ、前半の勢いに慣れてしまうと、後半の失速具合にだれてきてしまうのは玉に瑕。『武器庫』同様、映画の特定のシーンが5億点な作品でありました。尚、フランスでは7時間完全版がブルーレイで出ているらしい。10万円政府からもらったら買おうかな?
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