『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』近代ゴリラvs子連れ狼世紀の対決

三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実(2020)

監督:豊島圭介
出演:東出昌大、三島由紀夫、芥正彦、木村修、橋爪大三郎、篠原裕etc

評価:85点

2020年東京五輪開催が決まってから、暴走機関車よろしく墜ちるところまで堕ちている政界及び日本国。

2020年、いよいよ東京五輪開催が決まると、新型コロナウイルスの蔓延で詭弁詭弁ごまかしごまかしでやってきた政策の化けの皮が剥がされ、もはや誰にも制御できない状態となり、政界トップは妄想の中で作り上げた世界で政策は成功していると思い込んでいるに違いない。

さて、そんな時代にタイムリーとも言えるドキュメンタリーが降臨した。『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』だ。三島由紀夫が東大全員共闘の挑発に乗り1969年5月に東京大学駒場キャンパスで開催された討論会の熱気をTBSが持つアーカイブ映像を繋ぎ合わせ語った作品だ。ハリウッド対策が軒並み公開延期となりTwitterでも話題となっていた作品だ。実際にTOHOシネマズシャンテでは満席近くまで賑わっていました。

シネフィル界隈では、『森山中教習所』や『ヒーローマニア 生活』とゆるい作品を放っている豊島圭介監督に三島由紀夫を扱えるのかと不安の声が漏れていたのですが、三島由紀夫ファンである私も大満足な作品に仕上がっていました。

『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』概要


1969年5月に東京大学駒場キャンパスで行われた作家・三島由紀夫と東大全共闘との伝説の討論会の様子を軸に、三島の生き様を映したドキュメンタリー。1968年に大学の不正運営などに異を唱えた学生が団結し、全国的な盛り上がりを見せた学生運動。中でももっとも武闘派とうたわれた東大全共闘をはじめとする1000人を超える学生が集まる討論会が、69年に行われた。文学者・三島由紀夫は警視庁の警護の申し出を断り、単身で討論会に臨み、2時間半にわたり学生たちと議論を戦わせた。伝説とも言われる「三島由紀夫 VS 東大全共闘」のフィルム原盤をリストアした映像を中心に当時の関係者や現代の識者たちの証言とともに構成し、討論会の全貌、そして三島の人物像を検証していく。ナビゲーターを三島の小説「豊饒の海」の舞台版にも出演した東出昌大が務める。監督は「森山中教習所」「ヒーローマニア 生活」の豊島圭介。
映画.comより引用

近代ゴリラ:(学名)MISHIMANTROPUS YUKIORENSSISS-ULTRARIGHTUS

右翼である三島由紀夫と左翼である東大全共闘、水と油の関係である両者。全共闘は《全共闘に喰われた近代ゴリラ》というキャッチフレーズを作り、三島由紀夫にMISHIMANTROPUS YUKIORENSSISS-ULTRARIGHTUSという学名(さり気なく極右をラテン語風に書いて忍ばせている)を与え、100円の入場料を取り、1,000人近い学生を集めた。三島由紀夫サイド、楯の会の者も数名潜入するも多勢に無勢状態だ。

昨今の議論の場でそういった構図があると、詭弁で殴りつけたりと言葉のドッヂボールになってしまうのだが、この討論会はしっかりキャッチボールをしていた。確かに豪速球、変化球は投げるのだが、しっかり相手のボールを受け止め、相手を意識しているのだ。

そして、三島由紀夫は決して権力や知名度に胡座かくことなく、『不道徳教育講座』のような飄々とわかりやすい言葉で学生に語りかける。しかも、全く相手の揚げ足を取ろうとしないのだ。

しかも、相手の煽りである《近代ゴリラ》たるパワーワードをユーモアとして討論会の盛り上げに使っているのです。三島由紀夫は言葉の有効性を信じて、学生に立ち向かったのです。

そんな白熱討論会に一人の曲者が現れる。赤子を頭に乗せ、三島由紀夫に斬りかかる。彼の名は芥正彦。寺山修司と前衛演劇を手掛けたこともある、アーティストだ。彼は三島由紀夫が概念ばかり話して行動に移せていない様を巧みな言葉捌きで攻撃する。それを三島由紀夫は交わしつつも、芥正彦の意見を認め、闘いの中で友情が生まれていく。そして、芥正彦はオーディエンスに激昂する。「てめぇら、三島由紀夫を殴りに来たんじゃねぇのか!殴りてぇ奴は前へ出ろ!臆病ものめ。」と煽り、議論をヒートアップさせていくのだ。

そして、段々と全共闘は右翼と左翼水と油の関係だが、倒すべき敵は一緒であることに気付かされていく。

豊島圭介監督は、聞き取りづらい、わかりづらい言葉の補足を的確に入れつつ、過去のアーカイブ映像、関係者インタビューであの討論会の白熱具合を見事に再現した。

そして、議論とは詭弁で論破することではなく対話であることを教えてくれました。学生時代に三島由紀夫にのめり込み、大学の文学ゼミで映画『憂国』の分析をしたブンブン大満足な作品でした。

P.S.小説家の島田雅彦は授業での喋り方をかなり三島由紀夫に寄せているのではと思った。

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