奇跡の女(1982)
Himala
監督:イシュマエル・ベルナール
出演:ノーラ・オノール、スパンキー・マニカン、ジジ・ドエンヤスetc
評価:85点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
先日、アテネフランセでの特集上映《フィリピン映画生誕百周年記念 フィリピン・シネマ・クラシックス》に行ってきました。映画呑み仲間から、激推しされた『奇跡の女』を観たのですが、映画内の治安の悪さがカンスト起こしているトンデモ映画でありました。
『奇跡の女』あらすじ
小さい村に住む平凡な女エルサは、ある日聖母マリアを見たと言い出す。当初は誰も相手にしなかったが、次第に噂が広まり、病人や障害者が彼女の元を訪れる。やがてそんな彼女の評判を利用しようとする者まで現れ、村全体が混乱してゆく。フィリピンの有名女優ノラ・オーノールの最高傑作かつイシュマエル・ベルナールの代表作とされる本作は、CNNのアジア映画オールタイムベストに唯一選ばれたフィリピン映画でもある。
※アテネフランセサイトより引用
ありのままの姿を魅せすぎて地獄を見せるのよエルサは
皆既日食に怯える村人。それを余所に、何かに惹かれたかのように女が丘を目指していく。彼女の名はエルサ。村の何の変哲もない女だ。しかし、彼女は皆既日食の日を境に聖母マリアを観たと言い始める。当然ながら、頭おかしいのでは?と不審に思う村人だが、彼女が病気を治せる超能力を持っていることが分かり噂が広がっていく。そして、世界各国から病を治して欲しいと人々がやってくる。ジャーナリストも駆けつけ、村は一気に有名になる。人は強欲な生き物だ。彼女の超能力を出汁に、自分たちも一儲けできないかと、そこらへんの水にラベルを貼っただけの代物を販売し始めたり、娼婦館が爆誕したりする。奇跡を安売りしているんだから、あたいらだって稼いでいいだろ?あたいらに夢を見させてくれと図々しく彼女に付き纏うのだ。
最初は、聖母マリアの指示に従い人助けをしようと思って乗り気だった彼女だったが、村の変容ぶりに狼狽し始める。結局のところ、人間は都合の良いものを神だと信じ、都合の悪いものを呪いだと定義している真理にたどり着くのだ。しかし、時すでに遅し。村人たちは、彼女に寄生し依存関係となっている上、彼女を求めてやってくる人は、自分で論理的に思考することを放棄し、都合の良い指針を与えてくれる存在として彼女に過度な期待を抱いている。
村では、殺人事件や食中毒死事件が勃発し、彼女の奇跡だけではどうにもならなくなっていく。
この不気味で滑稽な寓話は、人間の欲深さをシニカルかつリアルに描きこみ、観るもグロテスクな人間の浅ましさの深淵を魅せてくれた。
ありのままの姿を魅せたエルサが、地中から無数に伸びる触手に絡まれ、身動きが取れなくなる様に背筋がゾッとしました。
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