【ケリー・ライヒャルト祭】『リバー・オブ・グラス』拳銃を落として始まり、棄てて終わる

リバー・オブ・グラス(1994)
RIVER OF GRASS

監督:ケリー・ライヒャルト
出演:ラリー・フェセンデン、ディック・ラッセル、スタン・カプランetc

評価:80点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

今、密かに日本のシネフィルの間でも注目されているアメリカの監督ケリー・ライヒャルトのデビュー作『RIVER OF GRASS』を観ました。デビュー作は監督の全力投球を観測できる為、荒削りながら面白かったりするのですが、これはなかなか凄い作品でした。

『RIVER OF GRASS』あらすじ


Cozy, a dissatisfied housewife, meets Lee at a bar. A drink turns into a home break-in, and a gun shot sends them on the run together, thinking they’ve committed murder.
訳:不満を抱えた主婦コージーは、バーでリーと出会う。呑みは家宅侵入に変わり、銃撃は殺人を犯したと考えて一緒に逃走します。
IMDbより引用

拳銃を落として始まり、棄てて終わる

私がもし映画学校の先生なら、生徒に「貴方の考える泥棒を追いかけるシーンの演出を書きなさい」という課題を与え、正解例として本作の冒頭を観せたい。

冒頭、レジスターにフォーカスがあたる。そして、男の顔のドアップを幾つか提示した後、レジスターからお金を掻っさらう手を映す。次の場面では、逃げる男と追いかける男が映し出され、後者が銃を向けようとするとホルダーにないことが発覚する。そして、どこで落としたかが回想される。

言葉なくしても、追う者/追われる者の構図が描けることを証明しており、この時点でケリー・ライヒャルトの超絶技巧っぷりを感じとれる。

さて、これはアンニュイを極めた『俺たちに明日はない』である。拳銃拾った男と、広大ながら閉塞感が漂うアメリカならではの退屈さにうんざりしている女が、プールで人を殺めたと勘違いしたことから始まる逃避行だ。全体的にゆるく、緊迫感はない。そして、シュールなコントが数珠繋ぎとなっている。

店で男が金を支払わず強奪しようとする間に、レジスター強奪が現れ、金を奪って逃走するのだが、店員は目の前の未遂男を殴り、キレた彼も商品奪って逃げる二重の外しギャグは素晴らしいものを感じる。

そして、映画は渋滞気味の高速道路をノロノロと走るアンニュイさの中、ヒロインが銃をポイっと棄てるところで終わる。そう、結局、退屈さは癒えないが、退屈なりにその退屈な人生を受け入れるのだ。

ロードムービーは、人の外へ出たい、退屈さから解放されたい気持ちを描くので外に向きがちだが、本作は内なる世界を見つめて終わる点ユニークな作品と言えよう。

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