【ジョン・ウォーターズベストテン2019】『Hail Satan?』悪魔は暴く、マジョリティ宗教の欺瞞を

ヘイル・サタン?(2019)
Hail Satan?

監督:ペニー・レイン

評価:70点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

先日、『ピンク・フラミンゴ』で知られるカルト監督ジョン・ウォーターズが2019年の映画ベストテンを発表しました。その中で、

「このクリスマスにTots for Tots(慈善団体)にお金を送らないでください。この異端者にそれを与えてください。」

と絶賛し6位に食い込ませたドキュメンタリー映画がキラリと光っていました。彼は、毎年彼からしか聞けない面白い作品を選出することで有名で、今年はアメリカのカルト団体《The Satanic Temple》に迫ったドキュメンタリーがランクインを果たしました。近年、ドキュメンタリー映画界への女性進出が勢いを増しており、『フリー・ソロ』のエリザベス・チャイ・ヴァサルヘリィや『ブラジル-消えゆく民主主義-』のペトラ・コスタなど世界の映画賞を席巻する力を魅せている。そこにペニー・レインが現れた。ペニー・レインといってもビートルズのあれではありません。彼女はFilmmaker Magazineの「インディーズ映画25の新顔」に選出されている注目監督です。アメリカ・ニューヨーク州にあるレンセラー工科大学で統合電子芸術の美術学修士号を、入学困難なことで知られるヴァッサー大学でアメリカ文化とメディアの学士号を取得し、複数の大学でメディアアートの教鞭を執っています。2004年から短編ドキュメンタリーを撮ってきた彼女は、2013年にウォーターゲート関係者からの証言で構成されるニクソン時代のドキュメンタリー『Our Nixon』で長編デビューを果たしました。長編4作目にあたる本作はファンタスティック映画の祭典・シッチェス・カタロニア国際映画祭のNew Visions Awardでスペシャル・メンションを受賞している。

ブンブンは、シネフィル仲間の間でドキュメンタリー専門家としての立ち位置を確立しつつあるので、問答無用そんな『Hail Satan?』を観てみました。

『Hail Satan?』あらすじ


A look at the quick rise and influence of the controversial religious group known as The Satanic Temple.
訳:悪魔の寺院(The Satanic Temple)として知られる、物議を醸す宗教グループの急速な台頭と影響力の観察。
※IMDbより引用

悪魔は暴く、マジョリティ宗教の欺瞞を

この世には建前上の信仰の自由はあるが、新興宗教はどうしても嘲笑の風に晒されてしまう。その所以は、胡散臭く面倒な宗教勧誘だったり、オウム真理教のように過激化し世を混沌に至らしめたことがあるだろう。そして強烈な悪魔的コスプレで演説、行進、儀式を行うThe Satanic Templeはそういった胡散臭さを孕んでいるのでアメリカでは時折ニュースでネタにされるようだ。しかし、そういった嘲笑の中には、マジョリティーの宗教、例えばキリスト教至上主義があるのではないだろうか?信仰の自由を謳っておきながら、宗教に階級がある。その矛盾、そして実は政教分離がなされていない政治に物申すのがこのThe Satanic Templeのミッションなのである。そこに加入した男へカメラは向けられる。彼は元々無宗教であった。新興宗教もバカにしていた。しかしながら、明確な派閥も倫理規程もなく活動するこの団体の不思議な魅力にう惹かれてのめり込んでいったとのこと。

そしてペニー・レイン監督はセシル・B・デミルの『十戒』や悪魔が登場する映像を引用することで、結局宗教とは一つの方向に向かって行動する団体に過ぎず、儀式的行いはそれを実現するための手段に過ぎないという理論を肉付けしています。なるほど、ジョン・ウォーターズが、慈善団体よりもこの団体に寄付しろというのもよく分かる。

そして思い返してみれば、高橋ヨシキやデーモン閣下など悪魔的ヴィジュアルな人程真剣に文化を見つめ直し、ブレずに情報発信していたりするので、何事も一目で判断するのではなく静観し分析することが重要であると痛感させられました。これは劇場公開は厳しいと思うのですがAmazon Prime Video等のサービスで配信されることを祈ります。

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