ザ・プレイヤー(2018)
原題:La prière
英題:The Prayer
監督:セドリック・カーン
出演:Anthony Bajon、Damien Chapelle、Alex Brendemühl etc
評価:60点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
MUBIで第68回ベルリン国際映画祭男優賞(Anthony Bajon)を受賞した『The Prayer』が配信されていた。『よりよき人生』、『ワイルド・ライフ』と東京国際映画祭常連監督であるセドリック・カーンが、山奥にある依存症更生施設を描いた作品。フランス批評家間でも評判は高く、Le Figaroは「罠のない共同体生活の単純さに、波乱に富んだ緊張した物語を刻みます。」と絶賛している。そんな作品を観てみた。
『La prière』あらすじ
Thomas a 22 ans. Pour sortir de la dépendance, il rejoint une communauté isolée dans la montagne tenue par d’anciens drogués qui se soignent par la prière. Il va y découvrir l’amitié, la règle, le travail, l’amour et la foi…
訳:Thomas、22歳。中毒から抜け出すために、彼は祈りによって自分自身を癒す元麻薬中毒者によって開催された山の孤立したコミュニティに参加します。彼は友情、支配、仕事、愛と信仰を発見するでしょう…
※allocineより引用
宗教は単純労働を持続化させる
外部から見ると宗教による集団は異質に見える。このことは『ミッドサマー』でも描かれている。あちらはホラーの文脈として、宗教による共同体を掘り下げていたが、本作はドラマ性を多少犠牲にしてまで、宗教と共同体の関係性を紡ぎ出した。主人公のトマや、薬物中毒者。彼は山奥のコミュニティにやってくる。ここではキリスト教を中心に添えた更生を行なっており、助け合いの精神で共同生活を行う。日々、入居者には単純作業が割り当てられる。穴を掘ったり、木を切ったりと退屈な仕事だ。しかし、誰も文句を言わない。それは作業にメンターがついているからだ。また、祈りによる不思議な空間を共有することで一体感が生まれるからだ。そこに感情をコントロールできないトマが入ってくる。そう聞くと、通常の映画であれば更生施設から逃亡する場面がある。そして映画的罠によって施設に戻される展開がある。しかしながら、本作はそういった映画的演出を封印している。施設は去る者を追うことはしない。そして戻ってきたら問答無用で迎え入れるのだ。これが、外部から見た宗教統治の異質さと不気味さを際立たせ、コロンブスの卵かな。逆に映画的に見えてくるのです。そしてそんな空間で、自分と闘うトマを演じたAnthony Bajonの演技は確かに見事であった。痙攣症状から滲み出る死の香り。中毒者特有の、人目の合間を縫って、タバコを盗もうとしたりする本能と背徳による行動の生々しさ。施設は自分を温かく迎え入れるが、結局克服するのは自分自身であることに絶望しつつも地を這うように痛みを乗り越えていく様。これは確かに男優賞も納得であった。ただ、宗教的話故、日本公開は厳しそうです…
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