【MUBI】『Neighbouring Sounds』2010年代ブラジルを代表する鬼才クレベール・メンドンサ・フィリオ

ネイバリング・サウンズ(2012)
Neighbouring Sounds

監督:クレベール・メンドンサ・フィリオ
出演:Irandhir Santos、Gustavo Jahn、Maeve Jinkings etc

評価:75点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

ところでクレベール・メンドンサ・フィリオ監督をご存知だろうか?ブラジル出身のこの監督は今フランスで注目を集めている監督で、AlloCineによれば長編デビュー作の『Neighbouring Sounds』は批評家総合年間ベストに選出され、東京国際映画祭でも上映された『アクエリアス』はカイエ・デュ・シネマの年間ベストにも選出されました。また先日カンヌ国際映画祭コンペティションに選出された最新作『BACURAU』は審査員賞を受賞している。『BACURAU』は今年最も期待している作品で、東京国際映画祭、ラテンビート映画祭での上映を切望していたのですが、全く音沙汰なく今年本作を観るのが絶望的となってしまいました。代わりにMUBIで長編デビュー作『Neighbouring Sounds』が配信されていたので観ました。

『Neighbouring Sounds』あらすじ


The lives of the residents of a Brazilian apartment building and the security guards who get the job guarding the surrounding streets.
訳:ブラジルのアパートの住人の生活と、仕事をして周囲の道路を守る警備員。
IMDbより引用

集合住宅、それは隣人が分からぬ空間

『アクエリアス』同様、本作も土地に滲む人々の感情というものを浮き彫りにしている。白黒写真と土地の音をシンクロさせる暑苦しいオープニングから始まる本作は、いきなり不穏な展開を迎える。眠れない女性にフォーカスが当たる。女性は睡眠導入剤を飲み怠そうにしている。おもむろに肉を取り出し、そこに薬を入れる。そして窓から、近所に住む犬を呼び出してそれを与えるのだ。次の日、窓から犬を探すが見当たらない。団地や集合住宅の持つ、一面しか見えない側面を引き出す。

本作は群像劇だ。このように他者の一面しか見えない不穏さを不気味な音楽と印象的なヴィジュアルで迫る。晴れて平和な風景を見せておきながら、いきなり車の衝突を描く。また別の日、女性が車上荒らしにあって、大事なCDプレイヤーを盗まれてしまう。車上荒らしの犯人を探そうとするのだが、隣人は皆口を揃えて何も知らないと言う。

集合住宅の持つ閉塞感は、断絶を呼び、隣に住んでいる人がどういう人なのかすら分からなくなる。しかし、多くの人は狭いスペースに押し込められ、暑苦しい。それを生活音の高まりという独特な演出や突然始まる滝修行の慟哭といったシュールな表現で演出するのだ。これは単にブラジルの物語ではない。日本だって、個人主義が横行し、自分の住んでいる周りのことに無頓着になっているのではないだろうか?

クレベール・メンドンサ・フィリオの引力ある土地の物語を紡ぐ才能はブラジル唯一、世界唯一の才能と言える。今後も応援したいと共に、『BACURAU』が日本公開されることを祈る。どうやら『七人の侍』と『ホステル』のマリアージュだそうなので面白いこと間違いなしだ。

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