『オスロ、8月31日』ルイ・マル『鬼火』の原作をトリアーの甥が映画化

オスロ、8月31日(2011)
Oslo, 31. august

監督:ヨアヒム・トリアー
出演:アンデルシュ・ダニエルセン・リー、マリン・クレピン、Aksel Thanke etc

評価:50点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

8月31日なのでノルウェー映画『オスロ、8月31日』を紹介します。監督は、あのラース・フォン・トリアーの甥であるヨアキム・トリアーです。原作はルイ・マルの『鬼火』と同じピエール・ドリュ=ラ=ロシェルの『ゆらめく炎』。中学時代『鬼火』を観て酷く退屈してしまったトラウマがあるのですが、果たして…

『オスロ、8月31日』あらすじ


麻薬中毒患者のための治療施設でリハビリを受けているアンデシュは、出所を間近に控えたある朝、大きな石を抱えて湖に入り死のうとするが失敗。その後、外出許可を得た彼は、就職の面接のため故郷オスロへ戻り、かつての友人の家を訪ねる。別れ際に自殺をほのめかすアンデシュだったが、友人はとりあおうとしなかった…。
※トーキョーノーザンライツフェスティバル2015より引用

本心で語り合える友の不在

本作は恐ろしい映画だ。死のうにも死ねず、悩みを友人に相談してもまともに取り合ってもらえない生き地獄が描かれているのだから。冒頭、人類が滅亡してしまったかのように閑散とした街が映し出される。そして、主人公のアンデシュが川に入っていく。そして巨大な石を持って自分を沈めようとするのだ。ギョッとする場面に肝が冷えます。しかしながら自殺する勇気が足りないのか、結局死ぬことができなかった。リハビリ施設から外出を許可されたアンデシュは就職するために、オスロに行く。そして知り合いの場所を転々とする。久しぶりの再会に友人たちは喜んでくれるのだが、アンデシュが鬱で自殺しようとしていることに関しては誰も取り合ってくれないのだ。

ルイ・マルが『鬼火』を作ってから半世紀近く経って本作が作られたのだが、『鬼火』以上にドライな作りとなっている。これはある種現代病なのかもしれない。人々はインターネットの発達によって身近に繋がれるようになった。しかしながらその関係は希薄だ。また、時間が以上に早いスピードで進むので、他者に深く関心を抱く余裕がなくなってしまっている。より一層、利害関係、コストパフォーマンスで人と接するようになってしまう。そんな社会で生まれる孤独に焦点を置き、一見すると友人不在の孤独には見えないアンデシュを取り巻く心から分かち合える親友の不在による哀しみが浮き出てくる作品でありました。

下手するとラース・フォン・トリアー以上に鬱の濃度が高い作品だと言えよう。

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