『ロケットマン』フレディ・マーキュリーの亡霊との闘い

ロケットマン(2019)
Rocketman

監督:デクスター・フレッチャー
出演:タロン・エジャトン、ジェイミー・ベル、リチャード・マッデンetc

評価:55点


エルトン・ジョンと言えば、ハッチポッチステーションの『おおブレネリ』であり、『Tommy/トミー』におけるピンボールの魔術師なチェ・ブンブンです。

巷では北の将軍の映画と勘違いされている『ロケットマン』を観てきました。

『ロケットマン』あらすじ


グラミー賞を5度受賞したイギリス出身の世界的ミュージシャン、エルトン・ジョンの自伝的映画。並外れた音楽の才能でまたたく間にスターへの階段を駆け上がっていった一方で、様々な困難や苦悩にも満ちたエルトン・ジョンの知られざる半生を、「ユア・ソング(僕の歌は君の歌)」や「ロケット・マン」など数々のヒット曲にのせたミュージカルシーンを交えて描いていく。イギリス郊外の町で両親の愛を得られずに育った少年レジナルド(レジー)・ドワイトは、唯一、音楽の才能には恵まれていた。やがてロックに傾倒し、ミュージシャンを目指すことを決意したレジーは、「エルトン・ジョン」という新たな名前で音楽活動を始める。そして、後に生涯の友となる作詞家バーニー・トーピンとの運命的な出会いをきっかけに、成功への道をひた走っていくが……。日本でも社会現象となった大ヒット作「ボヘミアン・ラプソディ」で、降板した監督に代わり映画を完成させたデクスター・フレッチャーがメガホンをとり、「キングスマン」シリーズのマシュー・ボーンが製作を担当。同じく「キングスマン」シリーズでブレイクしたタロン・エガートンがエルトン役を務め、吹き替えなしで歌唱シーンもこなした。エルトン・ジョン本人も製作総指揮に名を連ねている。
映画.comより引用

『ボヘミアン・ラプソディ』の亡霊との闘い

2018年は映画が豊作だった年で、これは2019年に厄介な亡霊を生み出してしまった。日本映画に関しては『カメラを止めるな!』の成功がインディーズ映画の足にしがみつき、なんでも比較の対象にされる。それは『カメラを止めるな!』を生み出した上田慎一郎ですら重い重いプレッシャーとしてのし掛かることとなった。世界に飛び出してみると、『ボヘミアン・ラプソディ』がその亡霊を担っている。製作の現場は混乱し、公開当時の批評家評は最悪であったのだが、口コミによってアカデミー賞の大舞台に躍り出た。奇跡を引き起こしたのだ。

そしてその成功の亡霊が足枷となった映画がこの『ロケットマン』であった。比較の目から逃れようとしても残念ながら、本作を『ボヘミアン・ラプソディ』抜きに語るのは難しい。なんたって、物語構造がほとんど一緒なのだから。クライマックス直前を冒頭に持っていき、そこから同性愛のカリスマアーティストの変遷を描くフレームはもちろん、両ストーリーも愛への渇望をバネにスター街道を登るものの、欲望は満たされず性やドラッグに溺れ、地に堕ちた末に自己を手に入れる物語となっている。細部まで似ているのだ。

そして誰でも知っている、キャッチーでインパクトの強いQUEENの楽曲に対して、ヴィジュアルこそは派手だが、曲のインパクトでパワー不足なエルトン・ジョン。不利な状態でのこの映画化は残念ながらイマイチで幕を閉じた。

『ボヘミアン・ラプソディ』はラストにLIVE AIDを持ってくるチートがあるので、無視して『ロケットマン』と向かい合ったとしてもパワー不足に見えてしまう。ミュージカルパートへの移行は、どうも鈍臭く、セリフから曲に切り替わる瞬間に違和感を感じたまま進んでしまう。そして、エルトン・ジョンの曲がその場面において適切かと訊かれたら、あまりしっくりこないものが多い。

The Whoの『Pinball Wizard』のカバーこそエルトン・ジョンの本質をついており、生まれながらにピンボールに熱中し、最強の地位を勝ち取った者が彼の前に現れた超人を前に恐れをなす内容は、ピアノに熱中し億万長者にまで登りつめたエルトン・ジョンが、今すぐにでも地位が失墜するのではと恐る様と重なる。そんな肝心な曲を、軽く扱ってしまい、彼の堕落のプロセスが描ききれていなかったりする。

何よりも、エルトン・ジョンの活動がダラダラと描かれすぎなところが最大の問題点である。もちろん『ボヘミアン・ラプソディ』だって中だるみは激しい作品なのだが、あちらの場合適度に舞台や人間関係が変わったからそこまで気にならなかった。しかし、こちらは終始同じ人間関係で、クズ人間ながら、悲しみを押し殺すナルシストの仮面をつけて歌いまくる様が描かれているだけだ。なので割と飽きてしまう。

だから数日後には観たことを忘れてしまいそうな作品に留まってしまった。期待していただけに残念です。

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