【アカデミー賞特集】『父から息子へ ~戦火の国より~/Of Fathers and Sons』シリアで育つということ

父から息子へ ~戦火の国より~(2017)
Of Fathers and Sons

監督:タラル・デルキ

評価:80点

第91回アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞において最有力候補『Won’t You Be My Neighbor?』を破りノミネートを果たした作品。とはいえ、中東情勢のドキュメンタリーは基本的に1枠設けられているので、2018年最高の中東情勢を扱ったドキュメンタリーと捉えるのが正しいとも思える。本作は、サンダンス映画祭でワールド・シネマ ドキュメンタリー賞を受賞した『それでも僕は帰る~シリア 若者たちが求め続けたふるさと~』のタラル・デルキ監督が、2年以上に渡り故郷シリアの一般家庭にお邪魔するという内容。日本のバラエティ番組でも、海外の一般家庭にお邪魔するものは沢山作られているのだが、本作はわけが違う。イスラム原理主義の家に密着取材するのです。これは相当な信頼関係がないとできなドキュメンタリーであり、プレスサイトでも

After his Sundance award-winning documentary Return to Homs, Talal Derki returned to his homeland where he gained the trust of a radical Islamist family, sharing their daily life for over two years. His camera focuses primarily on the children, providing an extremely rare insight into what it means to grow up with a father whose only dream is to establish an Islamic caliphate. Osama (13) and his brother Ayman (12) both love and admire their father and obey his words, but while Osama seems content to follow the path of Jihad, Ayman wants to go back to school. Winner of the Grand Jury Prize for World Documentary at the Sundance Film Festival, Of Fathers and Sons is a work of unparalleled intimacy that captures the chilling moment when childhood dies and jihadism is born.
ブンブン訳:サンダンス賞を受賞したドキュメンタリー『それでも僕は帰る~シリア 若者たちが求め続けたふるさと~』を経て、タラル・デルキは故郷のイスラム教徒の家族の信頼を得て、2年間以上日常生活に密着しました。彼のカメラは主に子供たちに焦点を合わせており、イスラム帝国を確立することが唯一の夢である父親と一緒に成長することが意味することについて非常に稀有な洞察でもって描いています。ウサマ(13)と彼の兄弟アイアン(12)は、父親を愛し、尊敬し、その言葉に従いますが、オサマはジハードの道を歩むことに満足してい。しかし、アイマンは学校に戻りたいと思っています。サンダンス映画祭、『父から息子へ ~戦火の国より~』のワールド・ドキュメンタリー賞の受賞者は、子供時代が亡くなりジハーディズムが生まれたときの背筋が凍る瞬間を捉えた比類のない親密さの作品です。
『Of Fathers and Sons』公式サイトより引用

とこの対象に対する密着を強調しています。そんな作品、日本ではユーロスペースにて開催されるドイツ映画祭HORIZONTE 2019にて

・3月9日(土)13:00
・3月12日(火)15:00
・3月13日(水)19:00
・3月15日(金)21:00

の4回上映が決まっています。ブンブンは米国iTunesで観ましたので、一足早く本作の魅力について語っていきます。

『父から息子へ ~戦火の国より~』概要


Talal Derki returns to his homeland where he gains the trust of a radical Islamist family, sharing their daily life for over two years. His camera is providing an extremely rare insight ..
ブンブン訳:タラル・デルキは故郷のイスラム教徒の家族の信頼を得て、2年間以上日常生活に密着しました。カメラは非常に稀有な洞察でもって描いています。
IMDbより引用

環境が人を変える恐ろしさ

この手のジャーナリズムに特化したドキュメンタリーは、その真面目さ故か映画賞を受賞しやすい傾向がある。そして、どれも素晴らしい内容ではあるのだが、普通の映画人にとっては数ヶ月すれば記憶から忘れてしまうような作品が多い。つまり、ネタのマンネリ化により、ジャーナリズムとしての目的である「知られざる惨劇を伝える」という目的が達成されていないように見えてしまうわけだ。

そんな中、タラル・デルキ監督の眼差しは観るものの心に刺さるものをもたらしてくれました。これは単にイスラム原理主義の一家の日常を撮った作品ではない。それだけでも十分価値があるのだが、本作は「イスラム原理主義の家庭で育つとは何か?」ということを捉えたまさしく貴重なドキュメンタリーと言えるのです。

アブ・ウサマは熱狂的なイスラム原理主義者。息子にウサマ・ウサマと命名し、ウサマ・ビン・ラディンを彷彿させていることからもお分りいただけるだろう。彼は、「爆弾が炸裂するのを見たことあるか?」と語る。そして「全てのヒーローは死ぬんだ。」と言い、毎日のように敵を狩りに行く。そんな家庭で暮らす息子ウサマとアイアンは面白いことに二つの道に別れて行く。ウサマ・ウサマは父を慕い、軍人になることに憧れる。父に応えるためにコーランを読み、まだ13歳なのに銃を持って訓練に挑むのだ。それに対して弟のアイマンは、どうも違うし自分は普通に学校で勉強したいと父・兄の姿を見て疑問を抱くわけです。

そして画面に映し出される実際の訓練シーン。これがとてつもなく怖い。教官は「アッラーは偉大なり!」をスローガンに、未来のテロリストないし軍人をみっちりとしごく。「オメェら、銃は怖くねぇんだ。おら立て!」と足から数センチのところに銃をぶっぱなしながら、恐怖で恐怖を克服させようとする。中には、火の輪をくぐる訓練なんかもある。

よく、動物は環境か遺伝かといった論争が巻き起こるが、本作を観ると人は環境でこんなにも変わってしまうんだと思わざる得ない。父親もイスラム原理主義の家庭の中で育ち、自分の血となり骨となっている為、こうも宗教に過激となってしまっている。そんな家庭で育ったら、当然ながら似たような思想を持つ子どもが育っていく。疑問を持っても、家族、そして社会の構造によって引き戻されてしまう。別にイスラム原理主義がダメとかそういう話ではなく、環境が人をどう変えていくのかというサンプルとして本作は非常に価値のある作品だと感じました。

興味ありましたら、是非ドイツ映画祭に足を運んでみて下さい。

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