氷の季節(2018)
原題:Før frosten
英題:Before the Frost
監督:マイケル・ノアー
出演:イェスパー・クリステンセン、グスタフ・デュキャ・ギース、マグヌス・クレッペルetc
評価:40点
トーキョーノーザンライツフェスティバル2019、2日目は東京国際映画祭で最優秀男優賞(イェスパー・クリステンセン)と審査委員特別賞を受賞した『氷の季節』を観ました。デンマークの時代劇。ブンブン『ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮』以来のデンマーク時代劇鑑賞です。果たして…
『氷の季節』あらすじ
イェンスは、荒涼とした農地で娘とふたりの甥と暮らしていたが、小麦の不作に苦しむ中、厳しい冬を目前に控えていた。窮地に立たされた彼は、裕福な農家に土地を売り、娘を嫁がせるが…。1850 年代のデンマークを舞台に、娘の幸福のためにそのモラルを揺るがせていく父親の姿をサスペンスフルに描く。
※トーキョーノーザンライツフェスティバル公式サイトより引用
19世紀のデンマークでは何が起きていたのか?
個人的に、本作はある程度当時のデンマーク情勢を知っていないと厳しい作品だと思いました。ブンブンの大学時代に書いた論文から抜粋すると下記のように書いています。
デンマークに平穏が訪れる19世紀、今度はナポレオンがヨーロッパ侵略を活発化させ、フランスとイギリスが対立する構造が生まれる。そしてデンマークはどちら側の味方 につくかで苦渋の選択を迫られる。そして、イギリス側につくことを決断したデンマークであったが、イギリス側の誤解により、デンマークが敵視され砲撃、窮地に立たされた。 ナポレオン軍の救済により、征服こそ免れたものの、ノルウェーを失う。また、多額な借金を抱え、国内ではインフレが横行。イギリスがデンマークの産物を締め出したことで、長年貧しい状況を抜け出せずにいた。貧しい国故に、周辺諸国の様子を伺う外交が中心を占めるようになり、時としてヨーロッパ情勢の渦中へ飲み込まれるようになる。
外交に失敗したデンマークでは、自国内で農作物を生産しないといけない状況に陥っていました。今となっては、農業大国であったものの、この時代のデンマークは前世代の汚職により壊滅していった時代を引きずっていて、決して潤沢な資源に恵まれているとは言い難い国であった。なので、映画を観ると、搾取される側も、する側も貧乏臭く見えるのです。本作は、徹底したリアリズムの基、19世紀の微かな希望を掴もうとする人々の生き様を捉えた作品となっています。
夢を掴むため、微かな幸福を得るために、過ちを犯してしまう父親像はまるでギリシア神話のような味わい深いものとなっているものの、個人的に凡庸で、なおかつ暗くて見辛いショットの連続に割とげんなりしてしまいました。
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