【 #myfff 】『野獣』5億点!第91回アカデミー賞短編映画賞ノミネートの戦慄ホラー

  

野獣(2019)
FAUVE

監督:ジェレミー・コント
出演:Félix Grenier, Alexandre Perreault

評価:5億点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

青山シアターで開催されているマイフレンチフィルムフェスティバル。短編映画は無料で観られるのですが、ブンブンはあまり短編映画に食指が動かない。しかしながら、第91回アカデミー賞短編映画賞にノミネートされた作品があるとなると話は変わってくる。ってことで『野獣』を観てみたのだが、今年のベスト短編映画は恐らくこれで決まりでしょう。大傑作5億点の作品でした。ただ短編故、何言ってもネタバレになりそうなので、映画を観てからこの記事を読んでください。

本記事は結末まで触れているネタバレ記事です。

『野獣』あらすじ

TylerとBenjaminは朽ちた列車や、工事現場を縦横無尽に駆け巡り遊びまわっていた。しかし、コンクリートの沼のようなところで遊んでいるうちにBenjaminが沼に嵌まって動けなくなってしまう…

超短距離走なブリュノ・デュモンの世界

原題《Fauve》とは邦題通り、「野獣」という意味もあるが、本作を観ると、フォーヴィスム派を意識しているというジェレミー・コントの意志を感じさせるヴィジュアルとなっている。荒々しい、風景の暴力を絵にそのままぶつけたようなフォーヴィズムの特徴を見事に映画という空間に閉じ込めている。例えるならば、モーリス・ド・ヴラマンクの強烈な廃墟の視覚的暴力に、ラウル・デュフィの色彩という絵の具を混ぜたような雰囲気をもっている。映画の世界で例えるならば、ブリュノ・デュモンが織りなす、異世界のような空間が16分の中に凝縮されている。そんな空間で、ドニ・ラヴァンの幼年期かと目を疑いたくなるようなFélix Grenier演じる坊主少年が縦横無尽に駆け回るのだ。これは、ブンブンの大好物である。

朽ちた列車で、彼とAlexandre Perreault演じる相方Benjaminが鬼ごっこのような遊びをしている。少年の遊びに明確なルールはない。しかし、完全にないかと訊かれれば「否」と答える。どうやら彼ら独自のアリゴリズムで点数を決めて競いあっているのだ。そんな無邪気な彼らを観ていると、ブンブンは童心に返ったような気持ちになる。そここそが監督の狙いである。

無邪気な遊びに微笑み、テンションが上がったところでギョッとする恐怖が押し寄せる。Benjaminが列車から転落するのだ。その格好をみると精神的に異常をきたすほどの気持ち悪さがある。明らかに骨折したような倒れ方をしているのだ。Tylerは歩み寄るのだが、静かだ。観る者は、特に幼少時代悪ガキだった者は、太古昔のゾッとする記憶がフラッシュバックすることでしょう。ただ、これはBenjaminのジョークだった。

そしてまた、再び無邪気に遊ぶ。そして舞台は、工事現場にシフトする。少年はすり鉢状になった空間、コロッセオのような場所でバトルするのだが、あれあれあれ、様子がおかしいぞ?Tylerは沼に嵌まって動けなくなってしまうのだ。それをBenjaminはお尻ぺんぺんしながら揶揄う。少年の危機意識は低いもの。ギリギリまで事態の深刻さに気づかないのだ。まあなんとか、Tylerは抜け出すのだが、今度はBenjaminが沼に埋まる。形勢逆転だ。しかし、遂に地獄が訪れる。彼が本当に脱出困難となってしまうのだ。ドンドン体が沼の深淵に吸い込まれていく。Tylerは彼を助け出そうとするのだが、沼が邪魔して近づくことすらできないのだ。そしてようやく事態の深刻さに気づく。Tylerは助けを呼びに行くが、誰もいない。絶望に暮れ、Benjaminのところに戻るのだが、もう彼はいなかった。帰らぬ人となってしまったのだ。

短編映画ならではのノリと勢いで押し切るボルト級の全力疾走っぷりに完全に打ちのめされました。長編映画だと途端にB級スリラー、時間稼ぎなシーンが目立つ作品になりそうな題材だが、16分という短い時間という利点を最大に活かすことで、唯一無二の大傑作映画となりました。短編映画の面白さって、この全力さにあるんだなと痛感します。

キツネの意味

本作は、短編ながら、教訓としてのキツネの使い方が非常に上手い。TylerはBenjaminに「キツネがいるよ」と言われても、信じなかった。しかし、大惨事を経て彼はTylerを目撃する。自分の思い込みによって、前しかみていないと痛い目を観るぞという教訓がここに籠められていると考えることができる。恐らく、監督は子供の教育向けに本作を作ったのではないだろうか?これを観た子供は、自分の遊びをしっかり制御するようになるでしょう。サンダンス映画祭他19の映画賞を受賞したのも納得。これは第91回アカデミー賞短編映画賞を受賞してほしい作品でした。

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