【Netflix】『バスターのバラード』コーエン兄弟飄々とヴェネチアを制す

バスターのバラード(2018)
The Ballad of Buster Scruggs

監督:コーエン兄弟
出演:ジェームズ・フランコ、リーアム・ニーソン、デヴィッド・クラムホルツetc

評価:70点

コーエン兄弟がNetflixとタッグを組み製作した西部劇オムニバス『バスターのバラード』。当初は、ドラマシリーズにする予定だったのが、2時間の映画に路線変更。そしてあっさりとヴェネチア国際映画祭で脚本賞を受賞した。そんな本作が先日からNetflixで配信となったので観てみた。

『バスターのバラード』あらすじ

陽気なガンマン、旅芸人、金発掘人など西部に生きる人々の人生をユーモア混ぜて描く6つの物語。

コーエン兄弟が見つめる西部劇

コーエン兄弟は、『ノーカントリー』のようなガチガチに賞を狙った作品で輝く時もあるが『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』のように、普通の映画に見せかけてさらっと賞をかっさらうことがある。飄々とした賞稼ぎだ。そんな兄弟の新作は、一見するとやる気のない西部劇に見える。ニカッ笑い、ベラベラと話しながら酒場にやってくる白い服の男。そんな彼が、メタ的な話をしながら敵を無慈悲なまでに射殺していく。このユルユルアクション映画がなんでヴェネチアで脚本賞を獲れたのか?

実はこの短編集、じっくり観るとコーエン兄弟の西部劇分析がなされている。西部劇批評として観ると非常に面白く、奥深いのだ。この作品は、アメリカの西部劇のような人情溢れる物語。西部開拓時代のロマンに絡めて人間を描いていくアメリカの西部劇の風格を持ちつつも、無慈悲に人がバタバタと死んでいく。まるでマカロニウエスタンの如く。このアメリカならではの西部劇とマカロニウエスタンならではのアクションを混ぜることで、リアリズムを生み出せることをコーエン兄弟は今回提示した。この作品では主人公だろうと悪党だろうと簡単に死ぬ。それも思わぬ形で死ぬ。一方で、死んだかと思ったら、運よく生きていたりする。西部開拓時代。人々は衛生面や人間関係等でいつ死ぬかわからない時代。どんなに物事がレールに乗っていてもちょっとした運命で、レールから外れてしまう。また、3話目の旅芸人の話では、五体不満足の語り部が”government of the people, by the people, for the people”と大衆の前で語るが、全然大衆に響かない。リンカーンでない人が偉大なことを言っても、響かないことを皮肉っている。

このように、コーエン兄弟はプログラムピクチャーのような西部劇、マカロニウエスタンの型から、人々の行動は結局偶然の重なり合いなんだという普遍的論を述べた。軽快ゆるゆるながらも、そして大して面白くない理論を6つの物語通じて象徴させているのだが、これが小粋で面白く見える。これはコーエン兄弟にしか為せない業だと感じました。

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