【後半ネタバレあり】『クワイエット・プレイス』マイケル・ベイ、アカデミー賞の舞台に立てるか?

※ここからはネタバレ全開で語っていきます。未見の方は本ページを閉じること強くオススメします。

飲み食いする時間などない!間の使い方に注目!

『クワイエット・プレイス』最大の面白さは、何と言っても《間》にあります。正直、本作のモンスター造形はエイリアンの二番煎じで真新しさはないし、人の殺し方も単調。何も事前評判なしで観たら、そりゃ不意打ちの面白さに高評価をつけるであろう。しかし、《アメリカで大ヒット》というラベルが貼られた状態で観ると、意外と肩透かしを食う。丁度『パラノーマル・アクティビティ』が出オチ映画だったように。モンスターの撃退方法も、《音》だという想定内の結果になっている。

ただ、それでもこの作品が魅力的なのは、《間》の使い方が抜群に良いからだ。まず冒頭、寂れたスーパーのシーン。子どもが静かに走り回る中、女はそっと薬を取る。抜き足、差し足で棚に近づき、手をスーーーーっと伸ばして薬を取ろうとする。カメラは手元にクローズアップしていく。手がプルプルと震えていて、今にも落ちそう。この間は無音で、じっくり時間をかけて演出する。この時点で、完全に観客を映画の世界に引きづり込むことに成功している。観客は、まるでジェンガで遊んでいるかのようなハラハラドキドキ感を抱くとともに、本作の死亡パターンを知る。画でルールを説明するスマートさがあるのだ。

そして、その後も、落ちてくる物をスライディングキャッチしたり、子どもがおもちゃのロボットを持って帰ろうとして、親が「そのボタン押しちゃダメ!」と言わんばかりに静かに焦る場面が立て続けに起こる。

お判りいただけただろうか、この映画をポップコーンを食ったりジュースを飲んだりできる筈がないのだ。

そして、家族はある家を拠点に生活を始めるのだが、なんでそこを選んだ?と思うほど危険な場所。音が激しくなりそうな草むらが周りを取り囲んでいる中にあるボロい木造建築を拠点にしてしまうのだ。しかも、母親は出産間近ではありませんか。モンスターが地球を支配してから数年が経とうとしている世界が舞台。そんな中で、夫婦はセックスをし、中絶すらせずにここまで来たのかと思うと、背筋が凍る。ワイルドすぎる。

案の定、この映画のクライマックスは、モンスターと戦いながら、出産するというエクストリームスポーツとなっている。父と子どもたちが協力しながらオカンをアシストしていくシーンは拍手喝采レベルに盛り上がる。ここでも、ジリジリとした間が観客の手に汗を握らせます。そして、最後の最後までクールな間が映画と観客の心を支配して終わる。だから、多少の映画の粗さは許せてしまう程に興奮が冷めないのだ。このノリと勢いこそ、ホラー映画ならではの醍醐味と言える。

音楽の意味

本作は、前半で語った通り、手話パートには字幕が要らないと考えている。しかしながら、一箇所だけ、どうしても字幕を入れたほうがいい場所がある。それは、家族がとりあえずのアジトを作り、その地下室でイヤホン越しにニール・ヤング”HARVEST MOON”を聴くという場面だ。この”HARVEST MOON”が本作を象徴するような音楽となっている。

Come a little bit closer
Hear what I have to say
Just like children sleepin’
We could dream this night away.

But there’s a full moon risin’
Let’s go dancin’ in the light
We know where the music’s playin’
Let’s go out and feel the night.

ブンブン意訳:
ほんのちょっぴり近づいて
言いたいことがあるんだ 聞いてくれ
子どもが眠るように
今夜夢を見ながら過ごすことができるわ

でも 満月が広がっている
月明かりの下で踊ろうよ
音楽が流れているところは知っている
外に出て夜を感じよう

長い放浪のサバイバル生活を終え、ようやく自分たちの居場所を作った。少しだけなら音楽を聴いたり、遊んだりできる場所もできたことを喜ぶ家族の心情をニール・ヤングのこの曲に託したのだ。日本では、権利の関係で劇中歌の翻訳は基本的にされないのだが、ここの部分には字幕がほしいと感じた。

最後に…

本作は、確かに前評判通り2018年を代表とするホラー映画であった。余計な政治性や裏テーマがない作品なので、『ドント・ブリーズ』や『ゲット・アウト』のようなものを期待すると肩透かしを食らうかもしれない。ブンブンは観る前、本作が批評家にも受けた理由として妊婦の社会に対する抑圧を反映しているからだと考えていた。アメリカも日本のように、街中で赤ちゃんが泣くと、大人たちが親に暴言を吐いたりするような社会で、いかに子どもを手なづけるのが難しいのかを裏テーマとして仕込んでいるのかと思って観たら、全くそんなテーマはありませんでした。

しかし、純粋なホラーとして十分楽しむことができた。家族と一緒に観たり、デートで観たり、はたまた一人で観たりできるライトな作品としてオススメできる作品だ。なので、会社やオフ会等で「オススメな映画ある?」と訊かれたら、ブンブンは本作を勧めることとしよう。

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