『コロッサス・ユース』ペドロ・コスタ、ホース・マネーへの道

コロッサス・ユース(2006)
英題:COLOSSAL YOUTH
原題:JUVENTUDE EM MARCHA

監督:ペドロ・コスタ
出演:ヴェントゥーラ、
ヴァンダ・ドゥアルテ、
ベアトリズ・ドゥアルテetc

評価:60点

早稲田松竹で、ポルトガルの鬼才ペドロ・コスタ特集上映が行われていた。今回の目玉は『コロッサス・ユース』。2006年、比較的最近の作品にも関わらず、Amazonだと1万円ぐらいする激レア映画だ。これは観ない手はないと、台風が迫る中、高田馬場に向かったのでした…

『コロッサス・ユース』あらすじ

アフリカ系移民が多く住むリスボン北西郊外のフォンタイーニャス地区。ヴェントゥーラは故郷の妻から三行半を突きつけられてしまう。故郷のカーボヴェルデに帰ろうとも貧しさ故に帰ることができない。彼はヤク中の女ヴァンダとの対話を通じて、自分の人生、そしてアフリカの歴史を辿っていくのであった…

ホース・マネーへの道

どうやらペドロ・コスタ監督はシリーズ物でリスボン郊外のフォンタイーニャス地区(アフリカ系移民のスラム街)を撮っているらしい。『骨』『ヴァンダの部屋』『コロッサル・ユース』『ポルトガル、ここに誕生す ギマランイス歴史地区(スウィート・エクソシスト担当)』『ホース・マネー

』と一貫してこの地区のアフリカ、特にカーボ・ベルデ移民の苦悩をミクロな視点からマクロな物語に発展させてきた。

先日観た『ホース・マネー』がその連作の極限だったが故に、本作は霞んでしまった。

故郷の妻から三行半を突きつけられ、居ても立っても居られない境遇のヴェントゥーラ。彼は彼女にに会いたく、手紙を送ろうとするが、なかなか妻の元へ届かない苦悩。彼の恐怖と虚無を、動く写真としてペドロ・コスタは捉える。『ヴァンダの部屋』のヤク中ヴァンダさんも現れ、一抹の希望を抱きポルトガルに来たものの、廃墟に押し込まれ、やり甲斐すら感じないしょぼい労働をさせられ、故郷にすら帰れないアフリカの人々の悲哀の塊が重層的に紡がれていく。観客は、『ヴァンダの部屋』や『ホース・マネー』同様虚無の世界に誘われる。亡霊のように彷徨う黒人、やけくそになりながらカードゲームをする男たち。ベッドルームで、淡々と暇を埋めるかのように、孤独を埋めるかのように語り合うヴァンダとヴェントゥーラ。貧しさを極めすぎると、そこには人間としての尊厳はなく、ただそこにいるだけの存在。全てが無になってしまうことが分かる。

風化した時を描くため、『ヴァンダの部屋』同様、2時間半以上かけて描かれるが、本作は断片を切り貼りしたような造りで退屈してしまった。だが、この荒々しい原石が後に『ホース・マネー』に化けるとなると胸熱である。なんたって、『ホース・マネー』は100分ぐらいで、退廃の刻の長さをしっかりと表現できていたからだ。画面作りも全く無駄がなかったからだ。なので、これはこれで良かったのかなと思った。

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