『タクシー運転⼿ 〜約束は海を越えて〜』ソン・ガンホの満面の笑みが光州事件で…

タクシー運転⼿ 〜約束は海を越えて〜(2017)
택시운전사(2017)

監督:チャン・フン
出演:ソン・ガンホ、トーマス・クレッチマンetc

評価:90点

去年の秋頃、オーストラリアの友達から、「ソン・ガンホの新作マジ凄いぞ!」と熱いメールを受け取った。

2ヶ月前頃から映画超人が相次いで、『タクシー運転手』は観ろ!と熱い声を受け取るようになり待ちに待った去年。初日にシネマート新宿で観てきました。

実は予告編もあらすじも観ておらず、ソン・ガンホの爽やかな笑みだけを目に焼き付けて観に行った。果たして…

『タクシー運転⼿ 〜約束は海を越えて〜』あらすじ

金に困っていたタクシー運転⼿マンソプは、大金が得られると聞いて、ドイツ人を乗せ光州へ向かう。しかし彼は知らなかった。光州は政府と市民の激しい抗争が勃発しており戦場だったことに…

光州事件とは?

本作は光州事件の映画ということで、まず光州事件について書いておく。光州事件とは1980年5月18日から27日に光州で起きたクーデターのことだ。1980年、朴正煕大統領の暗殺後により「ソウルの春」という民主化ムーブメントが起きていた。それに恐れを抱いた政府は戒厳令を発動し、反政府組織を徹底的に武力鎮圧していた。その一環で光州を封鎖し、光州市民を無差別殺戮していた。そして、なるべくその情報が外部に漏れないように光州の出入りを制限していた。本作は、ドイツ人ジャーナリスト・ピーターがタクシー運転手の力を借りて、光州に潜入し脱出するまでを描いている。

やもめのジョナサン、地獄行き

これが噂通りの大傑作。最後まで笑えるのだが、同時にめちゃくちゃ怖く、怒りがこみ上げてきてそして、あまりの悲惨さに泣けてくる作品だった。あのポスターの明るさからは想像もできなかった。

話は実話もの。1980年に起きた光州事件を扱ったもの。とはいえ、出だしはしっかり映画的だ。

その仕事は簡単なはずだった、、、

やもめのマンソプは、家賃の支払いが滞り、首が回らなくなっていた。そんな中、「光州まで外国人を送迎すると大金が入る」という噂を聞く。

簡単な仕事だと思い、ドイツ人の男を輸送するのだが、光州はマスコミが一切報道していない地獄だった。

こういう序章をソン・ガンホのコミカルなユーモアで爆笑の渦に包みながら描くのだ。出川哲朗ばりのテキトーな英語なんだけれどもチャーミングでどこか憎めないソン・ガンホ。

この笑いが本作で重要となってくる。光州の人は仲間との熱い絆で笑いを絶やさないようにしながら政府と闘う。無知な男マンソプのおかげで、皆の士気が上がる。しかし、あまりに酷い政府の仕打ちに笑いが失われる。マンソプから笑いが消えた時、我々観客は直視しがたい悪夢に戦慄するのだ。

シリアスなドラマにアクセントとして抱腹絶倒な笑いを入れ、尚且つ過不足なく事件を描く。ジャーナリズムを描き切る。チャン・フン映画は今回初めてだったが、技術力の高さに脱帽した。

『トラック野郎』好きに特に観て欲しい作品でした。

ブロトピ:映画ブログ更新

ブロトピ:映画ブログの更新をブロトピしましょう!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です