『ヴァレリアン』リュック・ベッソンはホドロフスキーとメビウスに近づきたい!

ヴァレリアン 千の惑星の救世主(2017)
英題:Valerian and the City of a Thousand Planets
原題:Valérian et la Cité des mille planètes

監督:リュック・ベッソン
出演:デイン・デハーン、
カーラ・デルヴィーニュ、
クライヴ・オーウェン、
リアーナetc

評価:40点

VFXの魔術師リュック・ベッソンの超大作『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』。昨年、予告編が出るや否や圧倒的ヴィジュアルに引き込まれた。しかしながら、アメリカでの興行収入が大失敗に終わったことから、なかなか日本公開がされなかった。そしてようやく先日、日本公開が決まりました。ただ、日本でも興行収入の雲行きが怪しい。初週の興行収入ランキングではいきなり11位スタートとなったのだ。

それも観たら納得だった。確かにポンコツ映画だ。しかし、ブンブンは嫌いになれなかった。むしろ応援したくなった。ってことで、今日は『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』について語っていきます。

『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』あらすじ

Pierre Christin(脚本)、 Jean-Claude Mézières(絵)のバンド・デシネを映画化。人類は国際平和の象徴として巨大宇宙ステーションを建築し始める。やがて宇宙人も宇宙ステーションプロジェクトに参画し、アルファ宇宙ステーションが爆誕。今や地球を離れ、宇宙を漂っていた。連邦捜査官のヴァレリアンとその相棒ローレリーヌはとある任務の為にアルファ宇宙ステーションに向かう。そこでは陰謀が渦巻いていた…

チャラ男はツンデレとビーチへどこまでも

本作は、宇宙を舞台にした壮大な話に見えて、実は非常に視野が狭く、おまけに『スター・ウォーズ/最後のジェダイ

』以上に物語が寄り道しまくる作品だった。ヴィジュアルこそ素晴らしいが、この歪な内容に、観客はどんどんどうでもよくなってくる。これは興行収入が悪いのも納得の作品だ。

まず、この作品は広大な宇宙を舞台に正義感溢れる連邦捜査官が大活躍する冒険活劇だと思わせておいて、いきなり裏切ってきます。主人公ヴァレリアンはチャラ男で、捜査よりもローレリーヌのことで頭がいっぱい。どうやって落とすかしか考えていません。しかも、戦闘能力・知能どちらもヘナチョコでローレリーヌの助けがないとミッションをまともにこなせない。その癖、ローレリーヌの助けを借りると、ふん!と気障る。それにローレリーヌはツンデレで返す。多くの人はリアじゅう爆発しろ!と思う光景だ。

これだけならまだ我慢できるのだが、物語が進めど進めど、全然事件の全貌が見えてこない。舞台は変えつつも、延々と茶番を繰り返しているだけなのだ。こりゃ退屈だ。『トランスフォーマー

』シリーズ並みに、段々と映画に対する興味が失せてきます。

リュック・ベッソンは『LUCY』の時もそう思ったが、ヴィジュアルにしか興味がないんだと思う。原作の要所要所をパッチワーク的につなぎ合わせているだけ。それこそ映画そのものがアルファ宇宙ステーションのように混沌を極めている。

ただ、リュック・ベッソンはある目的の為に毎作VFX技術を磨いているのではないだろうか。その為の練習だからストーリーが甘いのではと感じる。今回、それを強く感じた。

実は『アンカル』の映画化だった説


本作を観たときは、憶測だったのだが、アンスティチュ・フランセの図書館で原作を読み、確信を抱いた。リュック・ベッソンはホドロフスキーの『DUNE』あるいは、そこから派生した『アンカル』を映画化したかったのではないか?

ホドロフスキーの『DUNE』とは1970年代、鬼才アレハンドロ・ホドロフスキーが企画したスペース・オペラで、ミックジャガー、オーソン・ウェルズ、サルバトール・ダリ等を起用したトンデモ映画。しかし、あまりのクレイジーさに企画は頓挫した。ここで生まれた絵コンテが『スター・ウォーズ』や『マトリックス』『エイリアン』等の原点となったと言われている。また、『DUNE』から派生して生まれたバンド・デシネ『アンカル』も今日のSF映画のヴィジュアルに多大なる影響を与えている。(ただ、宣伝が語っている『ヴァレリアン』は『スター・ウォーズ』の原点だという観点は間違っていません。何故ならば、『ヴァレリアン』の原作が描かれたのが1967年だからだ)。

本作を観ると、明らかに映像のタッチが『ヴァレリアン』ではなく、『アンカル』そのものだった。特にアルファ宇宙ステーション内部の造形が、露骨に『アンカル』でジョン・ディフールが落下するシーンの風景を意識しているのだ。原作には、そういう造形がありません。また、物語も非常に似ている。

『ヴァレリアン』は宇宙生物を守りながら、様々な人種と交流し、宇宙の陰謀に立ち向かうという内容だった。

『アンカル』も私立探偵ジョン・ディフールが宇宙生物を守りながら、様々な人種と交流し、宇宙の陰謀に立ち向かうという内容だった。『アンカル』のストーリーが『ヴァレリアン』の原作を真似しているというのもあるのだが、これは明らかにリュック・ベッソンは『アンカル』の実写版が作りたいのだろう。

今回の興行的大失敗を経て、資金繰りが大変になったリュック・ベッソン。監督こそはドゥニ・ヴィルヌーヴとか他の人に任せて、是非VFX総指揮等を仕切って『アンカル』を映画化してほしい。ヴィジュアルだけは凄いから、リュック・ベッソンはこれからも密かに応援したいと思いました。

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