ナチュラルウーマン(2017)
原題:Una Mujer Fantástica
英題:A Fantastic Woman
監督:セバスティアン・レリオ
出演:ダニエラ・ヴェガ,
フランシスコ・レジェス,
ルイス・グネッコetc
もくじ
評価:80点
町山智浩が今回のアカデミー賞で外国語映画賞をチリ映画『ナチュラルウーマン』が獲ると予想していた。今年の外国語映画賞は強豪ぞろいで正直どれが獲ってもおかしくない状態。果たしてこの『ナチュラルウーマン』はどんな作品なんでしょうか?
『ナチュラルウーマン』あらすじ
『グロリアの青春
』のセバスティアン・レリオ最新作。トランスジェンダーのマリーナは父親ぐらい年の離れた男と付き合っている。幸せに思えたのだが、突如男が亡くなってしまう。そこからマリーナに壮絶な仕打ちが!警察には犯罪を疑われ、遺族には葬式に出るなと言われる。果たしてマリーナは彼氏に別れを告げられるのだろうか?
アカデミー賞獲ってくれ!
『ラブレス』『ザ・スクエア』と死闘を繰り広げているアカデミー賞外国語映画賞ノミネート作。今年ばかりは、どの作品もアカデミー賞最有力なのだが、できれば本作に獲ってほしい。本作はあまりに美しい愛の形を社会が壊そうとする作品だ。あまりに美しき世界。汚れなき愛を意識的/無意識に破壊されていく様子に泣けてくる。トランプ大統領爆誕以降マイノリティに厳しくなったアメリカ。セクハラにあれだけ五月蝿く騒いだのだからアカデミー賞は本作に与えようぜと言いたい。
実は一級のミステリーサスペンス
さて真面目に話すとしよう。本作は、予告編を観る限り典型的なLGBTQ映画に見えるが、実はミステリー、サスペンスとしても一級品だ。
トランスジェンダーのマリーナは、父ぐらいもの年の差離れた男と愛し合っていたが、彼が休止する。彼の家族はマリーナを冷たくあしらい、葬式に参加できなくなりそうになる中、彼の車から謎の鍵が出てくる。これは何なのか、、、?
軸はトランスジェンダーを巡る社会の冷たい目。警察は「私この手の人慣れているから」といいながらマリーナが性的にも嫌がる尋問をする、急死した彼氏の元カノからは、「気を悪くしたらごめんなさい。あなたってキマイラみたいね」と失言する。謝り文句を言った上でナイフを突き刺し、マリーナを傷つける様子から、現代の差別をえぐり出す。
しかし、その軸と並行してこうもハラハラドキドキさせてくる。特に終盤の密室潜入シーンは、あっやばい、やばいと観ている方が焦る次第だ。
また本作は、色彩と鏡の扱いが抜群に良い。愛の表現をディスコの微かなピンクの光で表現するあたり、ベタなんだけれどもあまりの洗練された光にノックアウトされる。
そして、マリーナはアイデンティティを見つめ直す時に必ず鏡を見る。この鏡描写の手数の多さにも圧倒された。
おまけ1:邦題の意味
邦題の『ナチュラルウーマン』は劇中で流れるアレサ・フランクリンの同名曲から取られています。余談だが、松浦理英子の同性愛を扱った小説『ナチュラル・ウーマン』(2度映画化されている)のタイトルもアレサ・フランクリンのこの曲から来ています。おまけ2:ダニエラ・ヴェガがエマ・ストーンに似ている
本作を観ていて、ダニエラ・ヴェガが誰かに似ていると思っていたら、『ラ・ラ・ランド』のエマ・ストーンでした。華やかな衣装含め、『ラ・ラ・ランド』感溢れてましたw
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