RAW ~少女のめざめ~(2016)
RAW(2016)
監督:ジュリア・デュクルノー
出演:ギャランス・マリリアー,
エラ・ルンプフ,
ローラン・リュカetc
評価:80点
2月は3本もの「めざめ」映画が公開される。『RAW 〜少女のめざめ〜』『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ
』『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』だ。その第一弾『RAW 〜少女のめざめ〜』を観てきた。カンヌ国際映画祭で失禁者続出したらしいゲテモノ映画だ。
『RAW』あらすじ
ベジタリアン一家に過保護に育てられた16歳のジュスティーヌは全寮制の獣医学校へ入学する。不安を抱く彼女が直面する大学生活は壮絶なものだった。入寮初日から上級生の猛烈な下級生いじめが始まる。そして、ベジタリアンにも関わらずウサギの腎臓を食わせられてしまう。救いを求めるかのように、同じ大学に通っている姉のところに行くのだが、姉は変わり果ててしまっていた。そして….ジュスティーヌにある異変が起きる…ポランスキーの『反撥』を原液で呑んだような厭らしさ
ロマン・ポランスキーの『反撥』に近い純粋無垢な少女が大人の階段を昇る際の悪夢が描かれた作品だと思い、実際に観てみたところ、『反撥』というなのウォッカをストレートで1リットル飲む様な毒薬。吐き気が出る程の傑作であった。神童だと言われ、親から過保護に育てられた少女が観る獣医学校の洗礼。割かと日本だけの話かと思っていた、先輩の後輩イジメ。イジメられたかつての後輩が上級生になり、あの頃の恨みを下級生にぶつける構図はフランスにもあった。
暴力、暴力、暴力の応酬。ベジタリアンにも関わらず、ウサギの腎臓を食わせられる鬼畜プレイ、とにかく断食して観て正解だと思う程に不快指数が溜まります。
ただこの映画、実は物語に強固な神話性を帯びている。それ故に、自分もかつて乗り越えてきた子どもと大人の狭間にある葛藤を思い出す。だから観終わった後、良い映画を観たという満足感を得る。これは例えるならば一本満足バー以上だ。
特に姉という存在の描き方が秀逸。
姉は1年早く獣医学校に入っている。妹は大学デビューの不安を優しかった姉に癒してもらおうとする。しかし、姉は変わり果ててしまった。これは、大人の世界を知った者とこれから知る者の対比として非常に重要だ。大人の世界を知った時に振り返る過去の自分。記憶から消し去りたい程ダサい自分。しかし、目の前にはダサい自分を思い出させる存在としての妹がいる。町山さんも語っていたことなのだが、本作は中盤から姉の話へとシフトしていくのだ。そして、厭な自分の黒歴史との決別を、妹との文字通り食ってかかったような肉欲の戦いによって描いていく。実は、本作において「食う」という行為が自分の中のガンを潰すメタファーとして重要な意味付けをされていた。
正直、万人にはオススメできない。R-15ではあるが、本当に吐き気がするほど鬼畜なショットばかりです。ただ、これは紛れもないイニシエーション映画の傑作と言える。
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