散歩する侵略者(2017)
BEFORE WE VANISH(2017)
監督:黒沢清
出演:長澤まさみ、
松田龍平、長谷川博己、
前田敦子etc
評価:90点
「クリーピー
」、「岸辺の旅
」などクセの強すぎる作風で毎作賛否両論が分かれる鬼才・黒沢清の新作が公開された。入江悠監督の手によって映画化された「太陽」の前川知大が率いる劇団・イキウメの演劇「散歩する侵略者」の映画化だ。カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で上映された際に海外メディアから絶賛され、公開前に知人からも「今年ベスト」と言われただけに楽しみにして映画館へ向かいました。実は、黒沢清映画は個人的にハズレ率が高いのだが果たして…
※本作は予告編もあらすじも観ずに鑑賞することを強くオススメします。なので、未見の方は回れ右をして映画館へ向かってください。
「散歩する侵略者」あらすじ
失踪した夫が帰ってきた。しかし、全く別人になっていた。一方その頃、一家惨殺事件を追うジャーナリストは「宇宙人」と名乗る男とキーパーソンを追っていた…
黒沢ワールド全開!面倒臭すぎる宇宙人
本作は、ZIP等で大宣伝されているが、映画慣れしていない人が観ると苦痛かもしれない。カンヌ国際映画祭に出品されたことを恥に思ってしまう程チープなCGに、いかにも演劇族が作りそうなインテリゲンチャな会話劇。それ以前に面倒臭すぎる宇宙人の行動にフラストレーションが溜まるだろう。こんな宇宙人に侵略されるぐらいなら、バトルシップ星人に侵略された方が良いと思うほど、とにかく面倒臭い。しかし、一度黒沢ワールドを受け入れると非常にユニークでのめり込む傑作だった。丁度今年は異色SF邦画「美しい星
」が公開されているだけにハードルは高かったが、「美しい星」に匹敵する程の傑作であることは間違いない。
「ボディ・スナッチャー」×「惑星ソラリス」
本作は、傑作「ボディ・スナッチャー」シリーズと「惑星ソラリス」が融合したような作品だ。外見は人間なのだが、脳は宇宙人に支配され別人になっている。この気持ち悪さ。社交的過ぎて面倒臭い宇宙人像は「惑星ソラリス」を彷彿とさせる。
」のように、言葉を知るものは概念を知り、概念を知ることで自分の世界が広がる。それが、宇宙人から「概念」を奪われることで、自分の世界が奪われる。脳内という仮想世界から人類は侵略されていく。まさに、言語は最大の武器であることを、この未知との遭遇から感じ取ることができる。
確かに映像はチープだし、ギャグも微妙だったりするのだが、「概念」に関する深い考察、特に「愛」という概念を説明するのがいかに困難か、説明困難にも関わらず世界共通の唯一のキーワードとして君臨する不思議さを深く深く掘り下げている異形の傑作であった。
賛否両論が分かれる「宇宙戦争」張りのラストもブンブンは好きですぞ!
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