ゲットアウト(2017)
GET OUT(2017)
監督:ジョーダン・ピール
出演:ダニエル・カルーヤ,
アリソン・ウィリアムズetc
もくじ
評価:85点
来月9/15(金)~9/18(月・祝)にかけて上野・浅草で「第10回したまちコメディ映画祭in台東」が開催されます。毎年、日本未公開のコメディ映画をいち早く配信しており、あの「ハングオーバー」や「キック・アス」、そして「きっと、うまくいく」などを発掘したことでも有名な映画祭です。チェ・ブンブンも第3回の時からボランティアスタッフとして毎年参加している映画祭でもあります。そんな本祭も今年で10周年アニバーサリー。今年も、アン・ハサウェイ主演の怪獣映画「シンクロナイズド・モンスター」等など見所多いのですが、ブンブンが一番注目しているのは「ゲットアウト」です。あのオバマ元アメリカ合衆国大統領が絶賛したホラーコメディで、情報サイトPastemagazineの「The 15 Best Horror Movies of 2017 (So Far)」でも1位の座を獲得している作品です(未見ですが2位がオリヴィエ・アサイヤスの「パーソナル・ショッパー」ってところがこれまた面白い)。
そんな「ゲットアウト」ですが、たまむすびで映画評論家の町山智浩が全力でオススメした結果、日本公開が10/27(金)に決まりました。それに合わせ、9/17(日)に行われます「したコメ」目玉イベント映画秘宝祭でも本作が上映されることとなりました。
毎年ボランティアをしつつ、一本は他の作品を観るブンブン。今年は「シンクロナイズド・モンスター」のチケットを押さえたので、「ゲットアウト」はブルーレイを輸入して一足早く観ることにしました。果たして怖いのか爆笑なのか…
「ゲットアウト」あらすじ
アフリカ系アメリカ人のクリスは、白人女性ローズとラブラブ生活を送っていた。そして、いよいよクリスはローズの実家に行くことにする。ローズの住む村は、未だに黒人を召使いに雇っているような地域。一抹の不安も束の間。クリスはローズ家から熱い歓待を受ける。しかし、徐々に不穏な空気が場を包む。そして、ある黒人の召使いが「ゲットアウト(出て行け)」とクリスに言い放った途端、せ…せん…戦…慄が…..抱腹絶倒背筋ひんやりブラックコメディ
ホラーホラー言うもんだからブンブン、身構えてみました。というのもホラー映画って結構苦手で、特に不意打ち系の驚かせ方が嫌いなのだから。ただ、蓋を開けてみれば、怖さ甘口、抱腹絶倒のコメディでした。
というのも、本作を撮った監督はアメリカのお笑いコンビ「キー&ピール」のジョーダン・ピール。
人種差別や政治ネタを容赦なく仕掛けてくるお笑いコンビで、実際にネタを観ると、日本ではあり得ないほどハードなネタを秀逸なオチまで付けて観客に投げつけてきます。
」という映画がありました。また、「ゲットアウト」のような異人種カップルが実家に顔見せする話と言えば大傑作「招かれざる客」なんかがあります。
しかし、こういった作品は非常に門構えがしっかりしている。真面目な作品な為、真面目な人の目にしか届きません。やはり人種差別を映画というコンテンツを使ってなくすためには、それこそ「ズートピア
」のように一見娯楽作品に見せかけて実は…というように観客の潜在能力に刷り込む間接的な手法が要求されます。
まさにこの「ゲットアウト」はホラーとコメディのバランスを取ることで、幅広い人に「未だに存在する差別」「差別される側の恐怖」をしっかりと脳髄に焼き付けることができます。
伏線に注目せよ!
このレビューを読んでいる方は、なかなか本筋の話が出てこないので、フラストレーションが溜まっているでしょう。本当にすみません。本作は厄介なことに、何も知らなければ知らないほど楽しめる作品なのです。なんなら、町山智浩の解説も聴かない方がいいです。
ただ、これから楽しみにしている人の為にいくつか見所、注目ポイントについて語ります。
見所1:伏線に注目
本作は、お笑いコンビが撮っているだけに、まるでコントのような展開が用意されています。前半30分、ありとあらゆる些細な会話や小道具が、後半に伏線として驚くべき形で使われます。なので、前半30分は目をかっぴらいて、クリス達の仕草、そして人物館系に注目してください。後半に畳みかけられるどんでん返しに圧倒されることでしょう。
見所2:「ムーンライト」張りの特殊効果
本作は低予算ホラーなんだけれども、想像以上に凝った映像が多いです。なんたって、まず驚かされるのは「ムーンライト」を彷彿させる、黒人達の青く彫刻のように光る肉体の美しさ。「ムーンライト
」はデジタル加工で、額の色を抜いて、そこに青色を流し込んで作り込んだと言われる。本作が果たしてそこまでの技術を使っているかどうかは不明だが、キラキラと光る肉体に興奮するでしょう。
また、クリスの夢や幻覚のシーンの撮り方が、これまたアート映画さながらのユニークさと美しさを持っていたので、是非とも、アカデミー賞の視覚効果賞あたりにノミネートして欲しいです。
見所3:リル・レル・ハウリーに注目
本作がコメディだと言われる所以は、なんといってもクリスのダチであるポリスマン役ロブを演じたリル・レル・ハウリー。彼の放つパワーワード、コミカル&口べた過ぎてしょうもない感じが癒やしとなってホラーなのに、笑いをこらえるのに必死になります。彼には注目!
最後に…
日本本公開は10月と先なのですが、本作は今年一番のホラー映画なのは間違いありません。自由の国アメリカ、人々はなんだかんだ行って個性を重んじる国なんでしょと思っているそこの貴方!是非本作を観て、アメリカに潜む差別の息苦しさを笑いながら体感してみてください。
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