「落穂拾い」アニエス・ヴァルダが送る現代の落穂拾い!

落穂拾い(2000)
LES GLANEURS ET LA GLANEUSE(2000)

監督:アニエス・ヴァルダ
出演:アニエス・ヴァルダetc

評価:90点

現在、アンスティチュフランセでベスト・オブ・フランス映画祭特集が組まれており、そこで日本では滅多にお目にかかれないアニエス・ヴァルダの「落穂拾い」とオリヴィエ・アサイヤスの「感傷的な運命」が観られるとのことだったので行ってきました!アニエス・ヴァルダと言えば、「5時から7時までのクレオ」で有名なヌーヴェルヴァーグ監督で、先日彼女の新作ドキュメンタリー「Visages Villages」がカンヌ国際映画祭で最優秀ドキュメンタリー賞に与えられるルイユ・ドールを獲りました。そんな彼女の旧作の「落穂拾い」は以前から評判を知っており、ずっと観てみたいと思っていただけにかなり嬉しい。果たしてお味は…

「落穂拾い」あらすじ

このドキュメンタリーはタイトル通りミレーの油彩画から始まる話です。「落穂拾い」とは貧しい者が、畑などからおこぼれを頂く様子を描いている。1857年に描かれた絵の世界が約1.5世紀後の現代でも続いていることを、地方と都市部での「落穂拾い」比較を交え描き出す…

感情的?論理的?

ドキュメンタリーは撮影者の主張が強くなり過ぎないように、基本的に映し出されるモノに手を出さない。例え、レンズを超えて被写体に迫っても客観性を失わないようにするのが定石となっている。しかし、アニエス・ヴァルダは全力で被写体に迫る。更には自己愛が強すぎて、自分をも撮って撮って撮りまくる。言わば感情に身を任せたドキュメンタリーです。通常の作品なら、禁じ手もいいところで酷評もの。しかしながらこの「落穂拾い」は何ということか、非常に論理的な作品で、誠に二律背反な傑作でありました。

というのも、このドキュメンタリーは運に恵まれていた。それ故に、単純な現代の貧困に対する愚痴に留まることなく様々な世界を観せてくれた。「落ち穂拾い」は、フランスの法律でも言及され、現代でも貧しい者は条件付きで、私有地に入って積み残したジャガイモやトマトなどを拾うことが認められている。しかしながら、行き過ぎた資本主義、合理主義により地主や農家、漁師は生産量・漁獲量のコントロールを狂わす「落穂拾い」達に不満を募らせている。アニエスはそんなケチになった地主や都市部の人に文句を言いつつも、しっかりと落穂拾い「する側」「される側」、「貧しき落穂拾い」「富める落穂拾い」を均一に描き出します。そうすることで、それぞれの言い分が明らかになると共に、結局は法なんて形骸化しており、個人の見解でフランス社会が回っていることが明らかになるのです。

そして、面白いことにドキュメンタリーを撮るうちに、運が味方をして、偉人の曾孫や落穂拾いするミシュラン料理人、珍しい絵画にたどり着く。アニエス・ヴァルダの語り口の豊かさ、そして洞察力に感情的でありながらも論理的な「落穂拾い」にノックアウトされました。これは観て正解でした。

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