バンコクナイツ解説
先日、空族の話題作
「バンコクナイツ」を観て
絶賛したブンブン。
(「バンコクナイツ」感想
)
しかしながら、
ラストのシークエンスが
初見だとよく分からなくてモヤモヤ
していた。
ってことで、今回は、
「月刊シナリオ 2017年4月号」
掲載の「バンコクナイツ」脚本を
読んだ上で、ラストの展開について
語っていきます。
当然ながらネタバレ記事なので、
未見の方は、
映画館へ行ってください!
映画鑑賞後に残る疑問点
「バンコクナイツ」を友人と一緒に観に行った際、ラストのシークエンスが
よく分からないという感想を貰った。
バンコクの風俗嬢ラックと
そのカレシであるオザワが再開し、
ラオス近郊の地方都市イサーンへ
行き帰ってくる。
そして、何故か突然
オザワは闇で銃を
購入し、バンコクの
日本人歓楽街タニヤに
繰り出し映画が終わる。
別に銃で誰かに復讐する感じでも、
銃で自殺する訳でもない。
こりゃなんだ?
」で
監督トークショーを聞き、
また「月刊シナリオ」を
購入し読み込んでいく
うちに、なんとなく
意味が分かってきたので
考察していく。
銃はタイのシンボル
「国道20号線」上映会で
富田克也監督の解説を聞いた際、
「タイに行くと、日本人は必ず
現地人に『何やりたい?
銃・女・ドラッグ?』と訊いてくる」
というエピソードを聞いた。
ある種タイのシンボルといっても
過言ではない。
そして、本作をじっくりと観察
すると、オザワという日本人の
キャラクターだけ、
銃も女もはたまたドラッグにも
手を出していないのだ。
もちろん風俗にはいく、
ラックともラブラブなんだけれども、
女に溺れるまでには至っていない。
桃源郷にいれど、桃源郷に浸れない
日本人として劇中で存在しているのだ。
トンドトライブとの関係
そして、劇中で特記すべき点は、
ラックと別れたあと、
道を歩いていると、
若者に取り囲まれ、
「Do you have a gun?」
と尋問され、
「Gun?? I don’t have a gun!」
と答えるシーンがある。
そのまま、オザワは若者に連行され、
現地で活躍する多国籍集団
トンドトライブを牛耳る
日本人に出会う。
オザワはタイの中では、
名は通っており行く先々で
知り合いに会うが、結局
どこにも腰を据えていない。
現地で悪どいビジネスを
している日本人を冷めた目で
見ている。
一方ラックを愛しているものの、
現地人の貧困まで背負うほどの
勇気を持っていない、
あくまでラックの貧しさからは
目を背けようとすることで
現地人にはなりきれない
中途半端な存在になってしまっている。
劇中で出てくる日本人は
銃・女・ドラッグを通じて
現地になじんでいるのに、
何者にもなれない。
この描写があるからこそ、
ラストが強烈になってくると言える。
ラストの意味
結局、ラックは
5年も風俗で働き
トップに上り詰めるが
家族を幸せにすることができず、
また周りの人も貧困だけではなく、
HIVに感染し悩まされていたりして、
しかもあまり裕福ではない
オザワの存在を母親には
認めてもらえず、
海で自殺を図ろうとする。
それを見たオザワは、
何者にもなれず、
誰も救えなかった自分を
哀しく思い、
銃を買うことで
「タイで腰を据える日本人」
になろうとしたのではないだろうか。
一度出た桃源郷から見えた
冷めた世界。
しかし再び無理矢理戻ることで、
ラックを救う。
つまり、「銃」を使ってどうこう
ではなく、ラストのシーンは
「銃」にオザワの決意を
象徴させたといえる。
なので「バンコクナイツ」は
タイの総てを背負おうとする
男の話だとブンブンは
結論づけてみました。
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