人生フルーツ(2016)
LIFE IN FRUITS(2016)
監督:伏原健之
出演:津端修一,津端英子
評価:80点
Twitterで2016年ベストテンを見て回っていたら、
コアなシネフィルは結構
「ヤクザと憲法」を入れている
人が多かった。
どうやら東海テレビの
ドキュメンタリーに外れはないらしい。
テレビ局は制約が多くて自由に
作品を作れないだと!と
異を唱えた東海テレビが
戸塚ヨットスクール事件や
死刑囚の生活、ヤクザなど
通常のテレビ局ではなかなか
踏み込めないテーマに切り込み、
そしてDVD化しないことで作品の
価値を高めているとのこと。
(日本映画専門チャンネル
では
1月に東海テレビドキュメンタリー
特集が放送されます。)
今回は87歳と90歳の建築家夫婦の
ガーデニングライフを撮ったらしい。
口コミ効果もあってか、
歩レポレ東中野では
1時間前から長蛇の列を
なしており、ブンブンの
行った回は満席になった
程の人気作。
果たして…
「人生フルーツ」概要
ニュータウンの一角で暮らす90歳で建築家の津端修一と
その妻で87歳の津端英子は
自宅の庭に120種類もの
野菜や果物を栽培して、
半分自給自足な
生活を送っている。
そんな夫婦がかつて戦後日本の
「住」を支えていたことを、
紐解いていく…
ただの菜園ドキュメンタリーではない
てっきり、菜園でガーデニング
ライフを送っている老人の
生き生きした生き様を
追ったドキュメンタリーだと
思っていた。
確かにそういうシーンも多い。
菜園から桃やタケノコを採ってきて、
長年使用しているオーブンや土鍋で
美味しそうな料理を作っていく場面。
老人になっても仲良く建設的に
生活する生き様、観ていて微笑ましい。
ル・コルビジェの言葉を
借りればまさに
「家はくらしの宝石箱」な
映像である。
しかし、それだけだったら
若者であるブンブンの心は
そこまで鷲掴みすることは
なかったろう。
本作は知られざる団地ブームの
裏側を観ることが出来る
希少性にも価値を見出しているのが凄い。
戦後日本、廃墟同然になった土地を
如何に再生していくかと
考えた際、「団地」というアイデアが
出てくる。
津端修一は団地といういかにも
無味乾燥しがちな建設スタイル
から如何に自然と共存させる
術を考えていたかが
次第に解き明かされていくのだ。
街中に緑地を作り出したり、
はげ山に町人集めてドングリを
植えて蘇らせたりと、
人の心が豊かになる
環境作りを徹底して行っていた
ことが明らかになればなるほど
熱くなってくる。
あの熱い男が90歳になっても、
クリエイティブに活動している
と考えると涙が出てくる。
老いの過程が凄い
さらに本作が凄いのは、
前半部分では老夫婦が
生き生きとした顔を
していたのに、ある時を
境に津端英子の顔が
一気に老けてくるのだ。
ドキュメンタリー映画として、
その瞬間を撮ったのは、
本当にお見事!と言える。
そして、本作は都会っ子が
もはや知らない、イチゴの花や
胡桃がどうやって木に
なっているのか等を
魅せてくれるので、
小中学生にこそ観て欲しい作品。ま
ポレポレ東中野は連日満席
続出らしいですが、
家族コミュニケーションと
して連れて行ってみては
どうでしょうか?
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