【ネタバレ解説】「手紙は憶えている」アトム・エゴヤン遂に場外ホームラン!

手紙は憶えている(2015)
REMEMBER(2015)

監督:アトム・エゴヤン
出演:クリストファー・プラマー、
マーティン・ランドー、
ブルーノ・ガンツetc

評価:90点

今、TOHOシネマズ シャンテ
凄い作品が上映されているようだ。
それも、シネフィルが口を揃えて、
「何も観るな、予告編もあらすじも!」
と言って全くどんな話かわからない。

ってことで、先日観てきました!

今回、ネタバレせずに本作に
ついて語るのは不可能だったので、
全力ネタバレ記事となってます。
未見の方は回れ右して
映画館へ向かってください!

「手紙は憶えている」あらすじ

認知症のゼヴは最近物忘れが更に酷くなり、
妻が亡くなったことも忘れるようになっている。
そんな中、友人のマックスから1通の手紙を
受け取り、あるミッションを課せられる。
それは、アウシュヴィッツ収容所で
家族を殺した男オットー・ヴァリッシュ
を探しだし殺すことだった!

脚本のお手本!

本作は映画の教科書に載せても良いほど
脚本が洗練されている。
無名の脚本家ベンジャミン・オーガスト
書いた脚本は、別に奇をてらったことは
一切せず、従来のどんでん返しものや
サスペンスの技術をそのまま使いつつも、
しっかりシネフィルを唸らせるように
出来ている。
今回、いくつか本作の凄い脚本箇所を
ピックアップして語っていく。

4段階で近づく真相

まず、本作は認知症のおじいさんが
ナチスを殺すために東奔西走する
という話ということで、
段階を追って敵を追い詰めている。

まず一人目の標的は、
戦時中、北アフリカにいたと証言。
全く検討違いなことが分かる。

二人目は、
確かにアウシュヴィッツにいたが、
迫害されるユダヤ人でこれまた違う。

三人目は他界していたのだが、
息子がおり、ナチスドイツの
グッズコレクター。
ナチスの軍服とか自慢しており、
またレイシストだったので、
「これは!」と思わせておいて、
戦時中他界したその標的は
10歳でアウシュヴィッツにいなかったことが
分かる。

そして、4人目でついに標的と会った!
と思ったら、実は真の標的
オットー・ヴァリッシュは
認知症のおじいさん本人だったことが
分かるとドンドン真相に近づいていく
感じが上手い。そして、真相の
絶頂期で落とすから面白い。

道具の使わせ方

また、本作では認知症のおじいさんに
如何にしてアイテムを使わせるかという
ところに力が入っている。

例えば、手紙。
おじいさんは認知症なので、
一眠りすると総て忘れてしまう。
手紙の存在なんて忘れてしまう。

なので、電車で一緒だった少年に、
「友人に会いに行くんでしょ!
ほらポケットに手紙が!」と言わせたり、
病院でおじいさんが
「ポケットにあめちゃんが
あるから探ってごらん」と
女の子にポケットを探らせて
手紙を出現させたりと非常に工夫が
凝らしてある。

また、友人から手紙と一緒に
大量の札束を渡されるショットを
見せた後に、
おじいさんを探す家族が
「クレジットカードを使えば、
居場所が分かるのにな~」と
言うシーンが挟まる。
観客は、「現金いっぱい持っているから
使わないでしょう」と思う。
しかし、ホテルでおじいさんが
支払いに手こずっていると、
「カードでお支払いできますよ!」
とフロントの人が言い、
クレジットカードを使わせる。
上手いな~と本当に唸るばかりである。

焦らしが凄い!

本作、最大の特徴、
何故シネフィルが口を揃えて
「何も知識を入れずに観ろ」と
いうのか?それは焦らしが上手いからだ。

正直、おじいさんがナチス殺しを
することは30分ぐらいしないと分からない。
徹底的に、おじいさんは何をしに
病院を脱走しているのかが
分からないようにカモフラージュしているのだ。

そして、標的と会っても、
じりじりと相手の正体をばらすのを
焦らすから観客はハラハラドキドキする。

また同じ要領で、
アメリカからカナダへ国境を渡る際も
パスポートトラブルが起き、
国境警備員に足止めされたり、
服屋の店員に呼び止められ
荷物チェックをされたりするから
のめり込む。

いやー面白かった。

最後に

アトム・エゴヤンは同じくカナダの監督
ドゥニ・ヴィルヌーヴと似たような
作品を作るのだが、
ホームラン作品ばかり放つ
ドゥニヴィルヌーヴに対し、
白い沈黙

」のようにフライを上げてしまう
作品が本当に多い。

そんな彼が珍しく場外ホームランを
打ってブンブンは非常に嬉しかった!

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