【ネタバレ解説】「何者」2017卒就活生が激白!本作が等身大過ぎる10のポイント

何者(2016)

何者

監督:三浦大輔
出演:佐藤健、有村架純、
二階堂ふみ、菅田将暉、岡田将生etc

評価:5億点

今年、就活をしていたブンブンに
とって、朝井リョウのホラー小説
「何者」を観るのはかなりの勇気がいることだった。
何者

何者 映画

3月1日の合同説明会の時に、
会場でエキストラ募集の紙を
見たときから厭な気持ちしか
しなかった。

どうせ「就職戦線異状なし」みたいに、
軽い就活劇になっちゃうんでしょ?
原作のアノシーンやアノシーン、映像化できるの?
そもそも、あのエンディングは小説だから
できたはず。映画版はどうするんだ?
いくら、厭なドラマの名人・三浦大輔が
映画化しても…
と頭の中には
無数の不安がよぎりました。

そして、内定を頂き就職活動も終えた
10/16(土)。以前OB訪問でお世話になった方
と一緒という非常に危険な形で観ました。

その結果は、今年暫定ベスト!
今年の新作邦画ベスト1は、
シン・ゴジラ

」でもなく、
君の名は。

」でもなく、
ミニシアター系枠の「淵に立つ

」でもない。
「何者」であった。

これから、「何者」がいかに「ホンモノの就活」、
「等身大の就活生」を描いていたのかを
じっくり解説していきます。

(朝井リョウの原作書評はコチラ

)

「何者」あらすじ

時は大学4年生。
演劇サークルで人を分析するのが得意な拓人。
留学から帰ってきた瑞月。
意識高い系就活生・理香と
意識高い系で就活しない
カレシの隆良。
そして、就活に
テキトーなバンドマン・
光太郎。

5人は一緒に就職活動に挑むのだが、
やがて友情に亀裂が生じ…

ポイント1:就活サイトに注目

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まず、注目して頂きたいのは、
光太郎が使う就活サイトだ。
拓人に、「就活の先輩!
サイトはこれでいいんですかねぇ~」
訪ね、リクナビを使っている。

恐らくスポンサーの関係で
たまたまなんだろうが、ここで
マイナビを使っていないところがいい。

なんたって、光太郎は出版社を
狙っている設定なのだが、
だったらマイナビを使わないといけないからだ。

リクナビは、メーカーが強くて、
他の就活サイトにが持っていない
メーカーの情報を保有しているのだ。
また、使い勝手はマイナビよりも悪い
ことから、光太郎はマイナビを
使うべきなのにリクナビを使用している。
つまり、就活の情報収集が甘いことを
暗示するシーンとなっている。

ポイント2:Webテスト

本作で、ブンブンを「おっつ!!」と
唸らせたのはWebテストのシーン。
原作でも暴露されていたのだが、
実際、Webテストは友だちと
協力して行われています。

何なら、解答はネットで買えたり、
そもそも人脈でもらえたりします。
ブンブンは友だちがいないので、
友だちや解答を使わずに挑み、
チート使いを恨んだ記憶がある。

ってか大手の東宝映画で、
ここまでWebテストの実態を
描けたのは本当に凄いと
思った。これは偉い!

ポイント3:就活離脱を格好良く魅せる

何者

本作には、就活の荒波に
刃向かい、フリーランスで
生きようとする隆良という
キャラクターが出てくる。

知り合いにフリーランスのライターが
多いからよく分かるのだが、
完全「カッコイイ」と思ってやっているのが
バレバレである。

というよりか、就活を諦めたのを
他人からあざ笑われるのが厭で、
「俺は君たちと違うから」と
自分を大きく魅せようとしているだけだ。

フリーランスは、
会社のように総務や人事が
面倒を見てくれるわけではない。
自分の足で、他人と会い営業し、
血眼になって手にしたライター
の仕事も1記事5000円だったりする。
そして、自分で確定申告等の
煩雑な作業、保険や税金の管理を
行わないといけない。

それを分かっておらず、
平気で来た仕事を、自分に合わない
からと切り捨てる感じがリアルだ。

ここまでとは、いかないが
就活サレンダー組には
「俺海外一人旅するわ!」と言ったりして
自分を大きく魅せようとする人が
多数います。

ポイント4:SNSに毒される

就職が行き詰まる拓人と理香は、
就活仲間の企業を調べる。
それもブラックかどうか。

就活が行き詰まると
誰しもが他人を気にする。
そして、他人が内定した
会社がブラックなのを確かめ
安心する。

ブンブンも120社以上落ちている身
なので(今は内定もってますよ)

拓人と理香の気持ちがよく分かる。

特に頑張っているのに、
テキトーな光太郎が
あっさりそこそこのところに
内定をもらっている
不条理に対する理香の
気持ちは痛いほどわかる。

ポイント5:緊張感のある就活生同士の会話

タランティーノの「ヘイトフル・エイト

」の
ような水面下での騙し合いは、
就活でも起きる。

仲間からパソコンを貸してと
言われ、「ちょっとまって」と
お祈りメールを消す。

拓人が瑞月と
隆良の就活をあざ笑うと、
他の仲間は、気まずそうに
流す。
拓人もスマホを相手に触られたり、
見られたりするのをしきりに拒む。
このいやーな感覚は、
全く偽りがない。

就活を今年経験したブンブンも、
何度もこのような経験はしたし、
逆にやったりもした。
なので恐ろしい。

ポイント6:合同説明会の混雑

合同説明会の描写は、
リクナビがスポンサーで入っているので
やはりきちんと描かれていく。

あの手の合同説明会って友だちと
行くと、機動力が鈍重になり、
自分が見たい企業が
長蛇の列となっている
ケースが多々ある。

また、拓人がTwitterで
「合同説明会は有名企業だけで
なく、マイナー企業も
攻めるべし」という発想は
ホンモノだ。

そして、集まっている企業が、
ソレっぽいってか、何社か
実在する企業ねぇか?
(「ガリバーインターナショナル」とか)

ポイント7:OB訪問描写から見る「数」の病

意識高い系女子・理香は
OB訪問20人達成!と豪語するのだが、
なかなか受からない。
この就活トラップがリアル過ぎて
泣けて来ます。

というのも、就活はどの企業も
合格率は低い。そうなると、
人は数打てば当たると
信じたくなるもの。
その考えに囚われ、
量だけを追い求めて
質が失われていることに
気がつかない。

それはブンブンだ!
ブンブンも就活時期は毎日
2~3枚エントリーシートを
提出、120社以上受けたのだが、
面接で受からない。
数だけ追い求めて、
いざ面接で挑む会社に対する
熱意が足りなくなっていたのだ。

それになかなか気がつかず
もがき苦しんでいたのを
思いだし、辛くなったw

ポイント8:選考試験で知人に出くわす

原作でもあったのだが、
本作では選考会場で
知り合いと遭遇するシーン
がある。
それも筆記テストではなく、
GD(グループディスカッション)で。
「受けねえよ!」と言っておきながら、
実際にはその企業を受けていて
それが知り合いに見つかって
気まずくなる雰囲気よく分かります。

大手企業や、
映画とか音楽、広告業界に
行く人にありがちなのだが、
それは「受かるわけがないから、
諦めた」と匂わせて友だちに
語ることで自分を落ち着かせているのだ。

しかし、「ワンチャン受かるかも?」
「好きなことなら勝負できる」と
思い、密かに受け辛酸をなめる。

ブンブンも就職期間中数度、
知り合いに出くわし
気まずい思いをしたことがあります。
流石にGDは一緒にならなかったが、
その気まずさを映画版は完全再現しています。

ポイント9:テキトーな人が意外と受かる

就職活動が恐ろしいのは、
小中高大と総て自分の実力、
努力でもって「点数」
という形になって返ってきたのだが、
就職活動だけは「運」が強いという
点になかなか気づきにくいところだ。

受かりそうなヤツが落ちまくり、
テキトーなヤツが僅か数社しか
受けずに内定をゲットしてたりする。
それもそこそこ良い企業で。

この不条理に対し、映画版では
鋭い台詞を観客に投げつける。

内定を結構早くゲットした
光太郎は拓人と呑んだ後、
タクシーに乗り込む。
光太郎はポツリとこう言う
「俺、なんでお前(拓人)が
受からないのか全然分からない。
いや…嫌みじゃなくって。
俺だって、内定は獲ったけれど、
実感が湧かないんだ。
足が速い、みたいにたまたま
就職が得意なだけだったんだ。」

うぁーーーーーーーー!
これ、友だちに言われたことが
あるだけにメチャクチャ辛いです。
私もそうだが、周りには
TOEIC800点以上あっても
全く受からない人、
尊敬するほど頭が良いのに
受からない人。
外から見ると、就活シーズン
の始めに内定獲っていそうな
人が相次いで内定難民となる。
別に努力をしていないわけはない。
就職エージェントや
キャリアセンターなどを使って
道を切り開こうとするのだが、
全く開けない。

その不条理をあそこで、
あの台詞で魅せるとは
三浦大輔恐るべし!

ポイント10:1分間自己紹介

そして、衝撃的且つアヴァンギャルドな
原作もびっくり展開を終えてからのラスト
シーン。1分間で佐藤健扮する拓人が
自己紹介(自己PR)するところが
クローズアップで映し出される。

あの、佐藤健の自身なさげな、でも
頑張ろうとしもがく、けれども
人事目線で見ると
全く獲りたいとは思えないオーラの
出し方が本当に上手い。佐藤健お見事!

そのまま、中田ヤスタカの主題歌
「NANIMONO (feat. 米津玄師)」

流れグランドフィナーレを
迎えるのだが、もう完璧すぎて
指摘する欠点はありません。
ブンブン号泣、そして一緒に
行ったOBの方もご満悦で劇場を
後にしました。

最後に

バブリーすぎて、ゆとり世代激オコ
な「就職戦線異状なし

」。
発想が就活生を舐めすぎている
就活戦線異状あり

」と
就活映画は所詮ハリボテなもんか
と思っていたのだが、
この「何者」は違った。

まず、監督に演劇畑且つ
厭なドラマの名クリエーター
三浦大輔を起用したのが大きい。
さらに音楽をPerfumeの音楽等で
お馴染み中田ヤスタカに以来。
そして川村元気がプロデュース。

たった90分ちょいで、こんだけ
就活生の縮図を魅せてくれるなんて
なんて素敵なことだろう。
これは、大学のキャリア系授業で
魅せるべき傑作でした。

ブロトピ:映画ブログ更新

2 件のコメント

    • 就活生にとって、共感しかありません。
      ただ、本作で描かれていることは「ゆとり世代」「さとり世代」の就活生にしか分からないことなので、賛否両論も当然と言えます。
      ただ、ブロガーのいごっそうさんなら、意識高い系の描写は楽しめると思いますよ♪

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