アブラハム渓谷(1993)
Vale Abraão(1993)
監督:マノエル・ド・オリヴェイラ
出演:レオノール・シルヴェイラ、
ルイス・ミゲル・シントラetc
評価:65点
「映画遠足」2本目は、
オリヴェイラの代表作として
有名な「アブラハム渓谷」。
DVDは現在絶版となってしまい、
Amazonでも2万円を超える
プレミア価値がついている
作品である。
(輸入を試みようと思っても
4万を超えるのでマジで
レアもんですw)
188分とオリヴェイラ最長(?)
の作品時間、渾身の作品
なので、目をかっぴらいて
観ましたw
※川崎市市民ミュージアムで
9/19(月・祝)14:00より
また上映するようです。
「アブラハム渓谷」あらすじ
フローベルの「ボヴァリー夫人」をもとに、ポルトガルの文学巨匠
アグスティナ・ベッサ=ルイスが
アレンジしたものを映画化!
14歳のあどけない少女エマ。
彼女がやがて成長し医者と結婚するのだが、
夫は多忙でなかなか家にいないので
寂しくなり、様々な男に溺れる
ようになる…
危険過ぎるナレーション
映画にとって、ナレーションや
独白のシーンは危険だったりする。
「ボヴァリー夫人」を意識しているので、
下手すると「小説やん!」と突っ込まれ
兼ねない。
しかし、本作はあえてナレーション
全開で描かれる。
しきりに、物語の世界観を
ナレーターが逐一説明。
そのナレーションを
追うように物語は進むのだ!
最初は、「この作品ヤバイんじゃないの?
小説やん!」と思っていたブンブンですが、
これが3時間もたつと
オリヴェイラ特有の
土地の歴史、ないし一人の女の
歴史の重さを担わせる演出
なんだなと妙に納得し、
まるで熟成されたワインを
嗜むがごとく味わい深い
作品と変貌を遂げました。
エマが美しい
本作の主人公エマの演出が
美しいからこそ本作は
成り立っていると言えよう。
セシル・サンス・デ・アルバ扮する
14歳のエマは、大人を軽蔑している
無知な少女である。
潔白を象徴する白い衣裳に
「着させられている」彼女の、
潔白の裏ににじみ出る
ニヒルさ表現が本当に
上手い。
年を経ると
「クレーヴの奥方」や
「ブロンド少女は過激に美しく」など
オリヴェイラ作品には欠かせない女優
レオノール・シルヴェイラが
演じるわけだが、
「大人の女性」へとしっかり
変わっているのだ。
「愛」に対する無知さは
そのままに少女から女へと
変貌を遂げていくエマという
女。軽蔑が限りなく透明に近い
ブルーになっていく様子は観ていて
心地がいい。
また、エマが産む子供が、これまた
14歳のエマのように「軽蔑」を隠そうとして
隠しきれてないところが
これまた素敵である。
そんな彼女を、モネや
ルノワールの印象派絵画を彷彿
させる光と自然の構図に
すっぽり嵌まったら、
それこそ究極の美といえよう。
ただ…ストーリーは…
ただ、あまりに情報量が多かったので、
ブンブン、ストーリーを追うのに
必至でした。
特にブンブンの世代は、
生まれた頃からパソコンがあり、
中学時代にはスマホがあった
世代であるが故に、
エマのデカダンスっぷりには
理解しがたいものを感じた。
今の時代、スマホやパソコン、
テレビで簡単に「愛」や「性」を
しれてしまう為、エマの一生
「愛」の哲学を築けない描写は
分かろうとしても非常に
困難でした。
なので、また20年後ぐらいに
本作と再会して再考していきたいな
と思ったブンブンでした。
トリビア:ナレーターは…
「映画遠足」の呑みで、
オリヴェイラ通の方が教えてくれたのだが、
この作品のナレーターは撮影の
マリオ・バローゾとのこと。
オリヴェイラに「じゃあ、お前ナレーターな」
と指名されたとのこと。
全くの演技素人、ナレーター素人
が担当しているだけに、
これまた味わい深いものと
なっていました。
ロケ地に行こう!
本作や「アンジェリカの微笑み
」の
ロケ地になったドウロ川渓谷。
この地域は「アルト・ドウロの
ワイン生産地域」として
世界遺産登録
(2001年:文化遺産)
されています。
登録基準は
(ⅲ)現存するか消滅しているかにかかわらず、
ある文化的伝統又は文明の存在を伝承する
物証として無二の存在(少なくとも希有な存在)である。
(ⅳ)歴史上の重要な段階を物語る建築物、
その集合体、科学技術の集合体、
あるいは景観を代表する顕著な見本である。
(ⅴ)あるひとつの文化(または複数の文化)を
特徴づけるような伝統的居住形態若しくは
陸上・海上の土地利用形態を代表する
顕著な見本である。
又は、人類と環境とのふれあいを
代表する顕著な見本である
(特に不可逆的な変化によりその存続が危ぶまれているもの)
の3つです。
この地域は2000年の歴史を持つ
ポートワイン生産地で、登録範囲は
実に2,500平方キロメートル
(佐賀県より少し大きいぐらい)。
「アブラハム渓谷」に出てきた
階段状のブドウ畑を始め、
伝統的なワイン製造の文化が
チャペルや道路など
住民の生活と融合を果たしている。
そんなドウロ川に行ってみたい!
と思った方!
残念ながら日本のポルトガル
ツアーではあまり組み込まれていない
ので自力で予定を組む必要があります。
海外のツアー予約サイトVELTRAに
によると、ポルトから1日観光
ツアーが出ているので、
ポルトに3日ぐらい滞在し、
その間でツアーを組むのが
一番行きやすい方法だと
思われます。
大体、1万3000円ぐらいで行けますので、
ポルトガルに来た際は
是非行ってみてはどうでしょうか?
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