“Ç”北欧産トマス・ピンチョン系アドベンチャー「国を救った数学少女」

国を救った数学少女
The Girl Who Saved the King of Sweden

国を救った数学少女

著者:ヨナス・ヨナソン
訳者:中村久里子
出版:西村書店
出版年月日:2015/7/10 初版第1発行

スウェーデン御用達!アトミックな『リケジョ』

 昨年、日本でも公開された「100歳の華麗なる冒険」。
その原作者ヨナス・ヨナソンがまたまた
ぶっ飛んだ作品で世界中を魅了させた!
その名も「国を救った数学少女」。
最近、日本でも理系人を沢山輩出しようと
「リケジョ」って言葉を流行らせている。
そんな激アツな「リケジョ」旋風に原爆を
落としたのがこの作品である。

表紙を見ると一見、児童小説かな?と思ってしまう
ポップで可愛らしい表紙だが、それはトラップである。
何故か原子力研究所で掃除婦をする
南アフリカの出身の14歳少女ノンベコ
読み書きはできないが、数学だけ異常にできる
彼女は隠された7基目の原爆を手にしてしまい、
国家ぐるみの争奪戦に巻き込まれる…どうかしています。
読み進めていくと、変な双子やどこか間抜けな諜報員、
さらには胡錦濤国家主席と実在する人物まで総計数十人
のキャラクターが縦横無尽に文章を駆け回ります。
ボキャブラリーも様々な言語・国・専門用語が飛び交い、
その様子はまるでトマス・ピンチョンの
重力の虹」を思ってしまうほど、マジでどうかしています。

 しかし、そんなぶっ飛んだ小説が世界各国で賞賛されている。
その秘密は、「リアリティ」にある。
著者のヨナス・ヨナソンは元々スウェーデンの
地方紙でジャーナリストをしており、
マスコミ界にどっぷりとつかっていた人である。
なので、中東との核兵器による牽制、
どの国が核兵器を持っているかと躍起になって
調べる様子が緻密に描かれているのである。
そこに、「長くつ下のピッピ」のような
破天荒でちょっとヘン、でも愛らしい少女ノンベコを
登場させることでぐいぐい作品の世界に引き込まれていく。
そんなジェットコースター小説「国を救った数学少女」
の映像化不可能な世界観、
読めば読むほどしみ出てくるブラックな笑い…
どうかしている程にオモロイ!

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