パラダイス:神(PARADIES: GLAUBE)
監督:ウルリヒ・ザイドル
出演:マリア・ホーフスタッタ、ナビル・サレーetc
評価:80点
「パラダイス」三部作もいよいよ最後!
今回は、ヴェネチアで審査員特別賞を受賞し
三部作の中で最高傑作との呼び声高い
「神」に挑戦なり!
あらすじ~キリスト教徒の偽善に迫る~
まず、読者に訴えたいのが、
この作品が三部作の中で最もきついテーマだということ。
なんたって、熱心なキリスト教徒を揶揄しまくる話なのだ!!
レントゲン技師のおばちゃんは夏休みを貰うと、
移民の家に聖母マリア像を抱え
押し入り、布教活動する毎日を送り始める。
おばちゃんを論破する者や、一緒に祈ってくる者
様々いて、おばちゃんは神に仕えていることを
生きがいにしていた。
しかし、ある日エジプト人でイスラム教徒の夫が
車いすで帰還してきて日常は変わる。
夫は妻からの「愛」を求めるが、
妻はキリスト教への愛が強く
構ってくれない。
昔からのキリスト教徒である夫どん引きで
どんどん家庭が崩壊していくのだった…
日本人が観るとよくわかる??
キリスト教の偽善について語る、
恐ろしいテーマの作品だ。
主人公のおばちゃんは、キリスト教を
愛しているが理解をしていない。
自分の好きなものを相手に押しつけようとする
傲慢に支配されている。
インテリな家庭から論破されたり、
夫から忠告を受けても欺瞞に満ちあふれた
態度でキリスト教にしがみつこうとする
有様はまるで失楽園にいかないように
あがいているようにしか見えない。
無宗教(実際には多宗教社会と言った方がよかろう)
社会の日本が観ると、非常に滑稽で笑えてくる。
と同時に宗教が持つ問題も浮かび上がってくる。
敬虔なキリスト教徒であるはずの夫が、
妻の狂信的行為に嫌気が差し
アンチクライストに陥っていくところ
強烈な皮肉がきいている。
それがラストの妻の描写にも利いているところが
エグい。笑えるが恐ろしい。
宗教は、豊かな人間性を養うのに役に立つ。
昔の人が、社会秩序を保つ為に開発した
最大の発明だと思う。
しかし、一度狂信的になると、
他を拒絶しはじめ、戦争が勃発する。
また、宗教を押しつけることで
人々から反動を生み
孤立していく。
故に、「ライフ・オブ・パイ」の主人公のように
状況に応じて宗教を使い分ける。
他宗教のいいところを適宜使いこなす
能力が必要だなーとブンブンは感じた。
そう考えると、お正月からクリスマスまで
柔軟に取り入れる日本人の脳ってすげー!
ともかく、主人公のおばちゃんの
ウザさが半端なく、それで生じる
宗教というパラダイスが崩壊していく
過程をここまでブラックに笑い飛ばした
ウルリヒ・ザイドル監督すげーなと思う。
ブンブンは個人的に「愛」を激推しするが、
宗教問題に興味があれば是非コイツも
挑戦して欲しい。
すっかりザイドル好きになったので…
すっかり、ウルリヒ・ザイドルの世界観に嵌まってしまいました。
彼はパラダイス三部作の他に映画作っているそうですよー
インポート・エクスポート
ウクライナとオーストリア労働者の過酷な現状を描いた作品だそうです。
ドッグ・デイズ
ウルリヒ・ザイドル監督長編劇映画デビュー作。欲望が暴走する夏休みを描いた、
パラダイス三部作の原点とも言える作品。
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