【酷評/ネタバレなし】ジブリ「メアリと魔女の花」が失敗作だった5つの理由

メアリと魔女の花(2017)
Mary and The Witch’s Flower(2017)

監督:米林宏昌
出演:杉咲花、
神木隆之介、天海祐希、
満島ひかり、小日向文世、
佐藤二朗、遠藤憲一、
渡辺えり、大竹しのぶetc

評価:40点

スタジオジブリが解体され、「思い出のマーニー」のプロデューサー西村義明が設立したアニメ会社スタジオポノック。そんなスタジオポノック初映画が遂に公開されました。その名も「メアリと魔女の花」!近年、「レッド・タートル

」や「風立ちぬ」など奇をてらったジブリ映画が多い中、本作は「魔女の宅急便」や「天空の城ラピュタ」の時代へ原点回帰しよう、宮崎駿に愛を捧げようと直球勝負をしかけた。スタジオポノックの由来がセルビア語で「真夜中(поноћ)」という意味。果たして、「メアリと魔女の花」は夜明けを迎えられるのでしょうか?

「メアリと魔女の花」あらすじ

イギリスのメアリー・スチュアートが書いた児童文学「The Little Broomstick」の映画化。
自然に囲まれた田舎町に引っ越してきた11歳の少女メアリは、周りに何もないこの地に退屈していた。そんなある日、黒猫に導かれるまま、「夜間飛行」という7年に1度しかさかない花へとたどり着く。その花は魔女の国から盗み出されたもので…

スタジオポノック第一回作品は、残念だった

ジブリ映画にも関わらず、地上波で「借りぐらしのアリエッティ」も放送していたのに、休日のTOHOシネマズ海老名はガラガラであった。確かに9時と朝早い回だったからかもしれない。しかしながら、「パイレーツ・オブ・カリビアン 最後の海賊

」はどの回も満席近くまで埋まっているので、やはりスクリーン1で半分ぐらい(300/630人)はまずいと感じました。その不安も的中。映画としていろんな側面からマズイ作品でした。今日は5つの問題点について語っていきます。

問題点1:「驚き」がない

本作は、端的に言うと「驚き」が致命的なほどにない作品でした。ジブリ映画の凄いところは、ジブリ映画が苦手な人も議論したくなるような「驚き」が毎作あるというところにあります。映画のオフ会でジブリトークをすると、必ず1,2時間クラスの激しい議論になる。何故、そこまで人々を熱くさせるのか?それは世界観が唯一無二になっているからです。例えば、「風立ちぬ」ではモネ等の印象派をモチーフにした演出から、クリエーターの葛藤、そして男尊女卑の問題まで、多くの切り口がある。また「魔女の宅急便」や「千と千尋の神隠し」等ではフード描写が話題になる。シンプルに、ジブリ映画のロリコン問題についても議論になる。やはり、どんなに嫌いな人でも宮崎駿が創り上げた「スタジオジブリ」という名の要塞、世界観が気になってしょうがないのです。

ただ、本作にはジブリ映画が毎作発信している「驚き」がないのです。後述するある致命的な要因もあるのですが、すべてが二番煎じ。スタジオジブリの要素をパッチワーク的につなぎ合わせただけのものにしか見えないのです。監督の米林宏昌は「借りぐらしのアリエッティ」であまりに不気味な人間の諸悪を描き、「思い出のマーニー」で面白いトリックを魅せていた人のはず。どうしてここまで凡庸なのかと頭を抱えました。

問題点2:人物構成に無駄が多い

それでは、ストーリーをネタバレしないレベルでみていきましょう。本作は、人物構成が非常に変な作品です。主要登場人物は、動物含めて10人/匹ぐらいなのですが、何故か似たようなシルエットのキャラクターが多いのです。特に、ジブリ映画定番のマトリョーシカ体系のおばさんキャラがあまりに多すぎるのです。人物的に減らせたのでは、あるいは違う体系のキャラクターを創れたのではと思ってしまう。モブキャラも手抜きなのか、似たようなキャラクターを大量生産している感じ。もちろん、「風の谷のナウシカ」の王蟲のように大量にうじゃうじゃ出てくる作品もあるが、あれだって一つ一つの個体に差を設けていました。本作は似たようなキャラに対する描き分けを手抜きしているような印象を受けました。

問題点3:脚本が薄っぺらい

本作を観て、ノレなかったのは「脚本」にもあります。ここでいう「ノル」とは、好きか嫌いかのパラメーターがどちらかに吹っ切れるということ。嫌いな作品でも「風立ちぬ」は語りたくなるほど、重厚な脚本になってました。

さて、「メアリと魔女の花」は世界観が圧倒的に描けていない。予告編でもあった、メアリの遠い血族と思われるもう一人の赤毛少女の正体。これが物語前半で、強調して描いているにも関わらず、ほとんど説明されないのです。いや、説明らしきシーンがあるのだが、あまりにあっさりとしすぎているのです。ここをしっかり描かないと、メアリが選ばれし者だという説得力が欠けてしまうので絶対に端折ってはいけないシーンです。

また、魔法の国に行くシーンは「ハリー・ポッター」かと思うほど既視感がある。そして、黒幕や大事件を「焦らす」というテクニックを使うことなく描くことで先の展開が分かって退屈してしまうのです。

他のジブリ映画にあった、先の読めないワクワク感が失われているところもかなりイタイ。

問題点4:ジブリの狂気がない

ジブリ映画って、今となっては老若男女、世界中で愛されているジャンルではありますが、基本的に狂気の映画です。宮崎駿のフェチズムをガンガン投影させています。また、「千と千尋の神隠し」のカオナシや「風の谷のナウシカ」の王蟲のようにめちゃくちゃ不気味なキャラクターだって出てくる。宮崎駿以外の監督でも高畑勲監督は「かぐや姫の物語」でカタルシスの限界に挑む映像を作り出していました。本作の米林監督だって大林宣彦を思わせる狂気を作り出すことができるはず。むしろ、狂気=ジブリ映画なだけに、毒がなさすぎる本作はカレールーのないカレーライスと言えよう。

問題点5:ネタバレしすぎな予告編

こうも酷評しているが、実はブンブンの怒りポイントの7割以上は予告編にあります。「ハクソー・リッジ

」を観た際に予告編で5分ぐらいの予告編が流れたのだが、ネタバレ全開、お話のA to Zを語っているのです。映画館だから逃げ場はないわけで、ブンブンは終始「やめろー」と心が叫びたがっていました。本当に蓋を開けたら予告編の通りで、これが「驚き0」のジブリ映画へとつながってしまいました。

最後に…

スタジオポノックはまだ真夜中のようです。だが、スタジオジブリの後継者として、今後の活躍は期待したい。日本にしか作れない技術力でスタジオジブリを超える面白い作品を作ってほしいなと思いました。

↑主題歌SEKAI NO OWARI「RAIN」

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