【ネタバレあり】『プロジェクト・ヘイル・メアリー』どうしてこれのゲームないの、質問。

プロジェクト・ヘイル・メアリー(2026)
Project Hail Mary

監督:フィル・ロード、クリストファー・ミラー
出演:ライアン・ゴズリング、ザンドラ・ヒュラー、ミラーナ・ヴァイントゥルーブ、ライオネル・ボイス、ケン・レオンetc

評価:70点


おはようございます、チェ・ブンブンです。

「火星の人」で知られるアンディ・ウィアーのベストセラーSF小説「プロジェクト・ヘイル・メアリー」が映画化されるとニュースになった時から、原作ファンの間で盛り上がっていた。しかし、本書はいわゆる《ネタバレ厳禁》な作品として悪名高く、読んだ人が口々に「面白いけれど《とにかく読め》としか言えない」と語っている。

私自身、その現場に立ち会ったことがある。数年前に飲食店で、カップルが最近ハマっているコンテンツについて話していたのだが、カノジョがその小説をカレシにオススメしていた。しかし、フワッとした話しかしていないがために絶対に読まれないだろうなといった反応をしていた。

映画に合わせて上巻だけ読んだのだが、確かにプロですら紹介が難しいと思った。ただ、職場でハマるであろう人に次のようなプレゼンをしたら、映画公開前に上下巻まで一気読みし「ブンブンさん、サイコーでしたよ!オススメしてくれてあざっす!」と言われた。

要は本書は探索型ゲームの初見プレイに近い体験が重要なのである。目覚めたら機械室にいて、探索しながら過去が明らかとなり、大きな問題を解決する鍵が出てくる。分からないから分かるにいたるまでの過程が面白いので、できるだけ情報をいれてほしくないのだ。だから、「探索型ゲームは好きかい?」と訊いてYESならハマるとプレゼンすれば、読んでくれるのだ。

さて、本作が映画化された。監督は『くもりときどきミートボール』や『スパイダーマン スパイダーバース』のフィル・ロード&クリストファー・ミラーなので大丈夫だろうとは思いつつも一抹の不安を抱いた。というのも、映画としては上映時間156分は長いのだが、探索型ゲームチックな内容の原作を映画化するとなると明らかに時間が足りないのだ。ドラマシリーズ向きな作品だし、そもそもゲームでやるべき内容だ。どのようにエピソードを取捨選択するのか気になっていた。映画としての犠牲はありつつも上手く調理することに成功していたように思えた。

『プロジェクト・ヘイル・メアリー』あらすじ

アカデミー賞7部門にノミネートされた「オデッセイ」の原作「火星の人」などで知られる作家アンディ・ウィアーのベストセラーSF小説を映画化。滅亡の危機に瀕した地球の運命を託された中学の科学教師が、宇宙の果てで同じ目的を持つ未知の生命体と出会い、ともに命を懸けて故郷を救うミッションに挑む姿を描く。

太陽のエネルギーが奪われるという原因不明の異常現象が発生。このままでは地球は冷却し、人類は滅亡してしまう。同じ現象が太陽だけでなく宇宙に散らばる無数の恒星で起こっていることが判明し、11.9光年先に唯一無事な星が発見される。人類に残された策は、宇宙船でその星に向かい、太陽と人類を救うための謎を解くことだった。この“ヘイル・メアリー(イチかバチか)”プロジェクトのため宇宙に送り込まれたのは、優秀な科学者でありながら学会を去り、いまはしがない中学教師をしていたグレースだった。彼は地球から遠く離れた宇宙でたったひとり、自らの科学知識を頼りにミッションに臨み、そこで同じく母星を救おうと奮闘していた異星人ロッキーと出会う。姿かたちも言葉も違う2人は、科学を共通の言語にして難題に立ち向かい、その過程で友情を育んでいくが……。

主人公の中学教師グレースを「ラ・ラ・ランド」「バービー」のライアン・ゴズリングが演じ、「落下の解剖学」「関心領域」のザンドラ・ヒュラーが共演。「オデッセイ」も手がけたドリュー・ゴダードが脚本を担当し、「スパイダーマン スパイダーバース」シリーズの製作・脚本などで知られるフィル・ロード&クリストファー・ミラーが監督を務めた。

映画.comより引用

どうしてこれのゲームないの、質問。

本書において一番ゲーム的部分である冒頭。記憶喪失な主人公が探索しながら、自分の役割を確認していく内容はRTAさながらにカットにカットを重ね、止まることなく20分ぐらいで落ち着く。狭い空間での探索は映画的でないとして大胆にカットしている。その代わり、最も映画的であろうロッキーとの意思疎通の場面に注力している。故郷の危機に対して宇宙で孤独にミッションをこなすもう一つの生命体。岩型の宇宙人と邂逅する。だが、相手の言語はわからない。2進数なのか10進数なのか、はたまた異なる概念で物事を捉えているのかわからない状態で、すこしずつ共通言語を組み立てていき、最終的に翻訳機を介してフランクにコミュニケーションを図りながら問題解決していく上巻の熱い展開に最も時間をかけている。小説だと、どのようなシニフィアンかはわからない。またロッキーからどのように世界が見えているのかもわからない。こうしたものは映画が得意としている。そして本書の最も面白い部分であるので素晴らしい取捨選択だと感じた。

また、映画の質感も『ダーク・スター』や『2010年』『ブラックホール』といったクラシカルな質感で描かれており、映画全体の感傷を支える要素となっていたのも好感度持った。

確かにかなり駆け足で、グレースやロッキーがなんで飛び上がっているのか、どうして不安に思っているのかわかりにくい部分もあったのだが、続きは小説でってことで目を瞑ることとする。