『砂丘』カウンターの終焉、カウンターの残穢

砂丘(1970)
ZABRISKIE POINT

監督:ミケランジェロ・アントニオーニ
出演:マーク・フレチェット、ダリア・ハルプリン、ロッド・テイラー、ポール・フィックス、ハリソン・フォードetc

評価:90点


おはようございます、チェ・ブンブンです。

大学時代にAVライブラリーで鑑賞して衝撃を受けたミケランジェロ・アントニオーニ『砂丘』が現在映画館で公開されている。昨年末に神保町/御茶ノ水エリアにできたミニシアター・シネマリスで上映されていると聞きつけて足を運んでみた。シネマリスは菊川のStrangerに近い構造の映画館であり、建築時に消防法周りで苦慮されていた記憶があるが座席間隔が広く音響も高低差も申し分ない良き環境であった。そんな環境で観る『砂丘』は素晴らしい映画体験をもたらした。

『砂丘』あらすじ

1960年代にベルリン、ベネチア、カンヌの3大映画祭すべてで最高賞を受賞したイタリアの巨匠ミケランジェロ・アントニオーニが、1970年にアメリカに渡って手がけた作品。ロサンゼルスとデスバレー(死の谷)を舞台に、一組の男女が繰り広げる愛の心象風景を描いた。

大学紛争の嵐が吹き荒れ、学生が武装警官と衝突する、カウンターカルチャー真っ盛りの1960年代末のロサンゼルス。学生集会でのむなしい議論に嫌気がさしたマークは、拳銃を手に学内で弾圧行為に及ぶ警官隊に立ち向かうが、発砲するチャンスを逸して逃走する。そして飛行場でセスナ機を奪い、大空へと飛び立った。一方、ロサンゼルスの不動産会社で秘書として働くダリアは、会議に参加するため、車で広大な砂漠を横断していた。そんな2人が偶然出会い、死の谷を見渡すことのできるザブリスキー・ポイントにたどり着くが……。

主演は、アントニオーニが街中でスカウトした新人のマーク・フレチェットとダリア・ハルプリン。音楽にはピンク・フロイドを筆頭に、グレイトフル・デッドのジェリー・ガルシア、カレイドスコープ、ジョン・フェイヒー、ローリング・ストーンズ、ヤングブラッズらの楽曲が効果的に使われている。

映画.comより引用

カウンターの終焉、カウンターの残穢

本作は学園闘争、カウンターカルチャー渦巻く1960年代の終焉を象徴した作品である。学生たちが議論を交わす。闘うべきか否か、どのように闘ったらよいのかといった葛藤の中、籠城戦を選ぶも、機動隊に鎮圧される。仲間が撃たれる瞬間を観た主人公は、復讐しようと銃を向けるがヒヨって逃走する。そして盗んだセスナで走り出す。

映画は心象世界的砂丘へと辿り着く。そこはハッテン場のような空間となっており、男女が交わっている。主人公も女と出会い肉体関係を結ぶ。基本的に主人公はイキっているだけである。警察が現れると、仮設トイレに身を隠し、銃口を向けるだけ。アクションは起こせないでいる。束の間の快楽は権力から逃れることができない。

本作はローリング・ストーンズやピンク・フロイドの旋律に合わせ、クールなイメージを繋いでいき、クライマックスの爆破へと駆け抜けていく。しかし、その爆発は現実のモノでありながら映画では虚構の中にしか存在しない。現状は権力に屈してしまっている中、反抗の残穢として爆破のイメージが反復されるのである。あまりにアイロニカルなクライマックスに泣く。