スマッシング・マシーン(2025)
The Smashing Machine
監督:ベニー・サフディ
出演:ドウェイン・ジョンソン、エミリー・ブラント、ライアン・ベイダー、バス・ルッテンetc
評価:70点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
『グッド・タイム』『アンカット・ダイヤモンド』のサフディ兄弟は解散し、それぞれ自分が撮りたい映画を制作することとなった。興味深いことに、互いの新作はどちらも日本で撮影を行っているスポーツ映画であった。兄ジョシュ・サフディは卓球映画『マーティ・シュプリーム 世界をつかめ』を、弟ベニー・サフディは総合格闘技映画『スマッシング・マシーン』を撮った。そして、どちらの作品も第95回アカデミー賞にノミネートされている。今回、試写会にて『スマッシング・マシーン』を一足早く観させていただいたのでレビューをしていく。
2026年5月15日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開となっている。
『スマッシング・マシーン』あらすじ
1997 年の総合格闘技デビュー以降、無敗のまま頂点へと駆け上がったマーク・ケアー(ドウェイン・ジョンソン)。UFCでの連覇を経て、 日本の PRIDE でも快進撃を見せると“霊長類ヒト科最強の男”の異名で恐れられる存在となる。しかし勝利を重ねるほどに、その重圧は彼の心を静かに浸食。同棲する恋人ドーン(エミリー・ブラント)との関係も次第に悪化していき、鎮痛剤への依存を深めていく。やがて初めての敗北を喫した“最強の男”は、ついに自らの弱さに向き合い、人生の再起をかけもう一度リングに挑むことを決意する―。
※Filmarksより引用
霊長類最強の男の心の弱さ
1997年に総合格闘技デビューを果たしてから無敗のまま頂点に立ったマーク・ケアーは日本での試合を控えていた。記者から「もし負けたらどのような気持ちになるか」と質問されても「俺は最強だし、負けた時のことなど考えられない」と答えている。一見すると傲慢に思えるが、カメラはマークの繊細さに目を向ける。巨大な肉体、ちょっと力の加減を間違えればすべてを壊してしまいそうな肉体をコントロールするようにリングの外側では他者に気を配っている。そして、リングの上での勝利の甘い蜜に至高の快楽を感じているのである。しかし、日本での試合でまさかの敗北。相手が反則技である脳天蹴りを入れたからである。すぐさま抗議をし、その試合は無効となったものの、反則による逆転勝ちを期待していたマークは初めての敗北を前に精神が蝕まれていく。
本作は、高揚感ある音楽と日米をスタイリッシュに往復する編集の中でアメリカンニューシネマ的辛酸を描いた作品となっている。マーク・ケアーはリングの上では試合という恍惚によって満面の笑みを浮かべているが、無敗のキャリアという重圧に押し潰されそうになっている。オピオイドをはじめとする鎮痛剤の中毒になっている上、寄り添おうとする恋人に弱みをみせたくないが故に突き放した態度を取っていく。
マークは自分の弱さと対峙する中でスキンヘッドにし心機一転を図るのだが、人間はそうそう変わるものではない。綺麗な物語とはならないのである。『スマッシング・マシーン』は、完璧に再現された90年代から00年代の日本の質感の中、マーク・ケアー密着ドキュメンタリーのようなタッチで生々しく等身大の格闘家の苦悩を描いている。筋肉だけが取り柄の、繊細で不器用でどうしようもないんだけれども、それでも前に進もうとする彼の姿に涙した。
また、本作では布袋寅泰がリングを盛り上げる存在として出演しているのだが、彼のパフォーマンスがまるで『ウッドストック』のジミー・ヘンドリックスさながらの迫力があった。
日本公開は2026年5月15日(金)TOHOシネマズ日比谷ほかにて。








