『ローマ11時』職の奪い合いの末に階段崩落

ローマ11時(1952)

監督:ジュゼッペ・デ・サンティス
出演:ルチア・ボゼー、カルラ・デル・ポッジョ、マリア・グラチア・フランチャ、レア・パドヴァニ、デリア・スカラetc

評価:80点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

先日、新文芸坐シネマテークで映画批評家・大寺眞輔氏が紹介していたジュゼッペ・デ・サンティス『ローマ11時』がプライム・ビデオにあったので観た。これが強烈な作品であった。

『ローマ11時』あらすじ

失業率の高さが問題になっていたイタリア。ある日会計事務所の秘書の求人が新聞に掲載されると、多くの女性が事務所の狭い階段に殺到し、階段が崩れ落ちてしまう。搬送先の病院で明らかになる女性たちの生活を描いた物語。

※プライム・ビデオより引用

職の奪い合いの末に階段崩落

大寺氏の講義の中で、ジュゼッペ・デ・サンティスは精緻な取材に基づいて映画を作っていると話していたが、確かに全体通して生々しい失業者の生活が炙り出される。会社の前にたくさんの女性が職を求めて集まる。だが、それをいいことに雇い主は給料を提示しない。たった一人だけ秘書を採用すると言う。そして面接が始まる。階段に膨大な女性が並ぶ。だが、待ったところで受かる保証はない。生きるのに必死な女性が無理矢理割り込んで面接を受ける。彼女は出てくる。映画的展開なら、ここでリンチが発生するわけだが、それは回避される。現実的な話はどうだったのか?彼女の行動を受けて、他の女性たちも面接を受けようと割り込み合戦が発生する。そして金属塀が壊れ、階段に亀裂が入り崩壊してしまうのだ。恐ろしいことに、ケガした人の目の前でメディアはアテンションを引く記事のタイトルを考えたり、病院も患者を早くリリースしようとしたりする。

本作が興味深いのは、映画的演出を階段崩落シーンに一点集中させることで映画としてのメリハリをつけている点にある。階段崩落のシーンは内田吐夢『どたんば』に近い迫力で行われる。本当に人が死んだのではと思うほどの再現である。そしてぶらぶらする金属が落下して女の顔がぐしゃっとなるか否かの宙吊りのサスペンスが生まれる。このバランス感覚に圧倒された。