センチメンタル・バリュー(2025)
原題:Affeksjonsverdi
英題:Sentimental Value
監督:ヨアキム・トリアー
出演:レナーテ・レインスヴェ、、ステラン・スカルスガルド、インガ・イブスドッテル・リッレオース、エル・ファニングetc
評価:50点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
第78回カンヌ国際映画祭でグランプリ、第98回アカデミー賞で作品賞を含む9部門にノミネートされている『センチメンタル・バリュー』を観た。確かに評価されるのもわかるがベルイマンにはなれなかった印象を受けた。
『センチメンタル・バリュー』あらすじ
オスロで俳優として活躍するノーラと、家庭を選び夫や息子と穏やかに暮らす妹アグネス。ある日、幼い頃に家族を捨てて以来、長らく音信不通だった映画監督の父・グスタヴが姿を現し、自身にとって15年ぶりの新作となる自伝的映画の主演をノーラに打診する。父に対し怒りと失望を抱えるノーラは断固として拒絶し、ほどなくしてアメリカの人気若手俳優レイチェルが主演に決定。やがて、映画の撮影場所がかつて家族で暮らしていた思い出の実家であることを知ったノーラの心に、再び抑えきれない感情が沸きおこる。
「わたしは最悪。」でも主演を務めたレナーテ・レインスベが主人公ノーラを演じ、名優ステラン・スカルスガルドが映画監督の父グスタヴ役で共演。妹アグネスをインガ・イブスドッテル・リッレオース、アメリカの人気俳優レイチェルをエル・ファニングが演じた。2025年・第78回カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞し、第98回アカデミー賞では作品賞をはじめ8部門で計9ノミネートを果たした。助演男優賞ノミネートのスカルスガルドはキャリア初のオスカーノミネートとなり、アカデミー賞史上初めて外国語映画での助演男優賞ノミネートなった。
多層的な過去を通じて心の家をリノベする
本作は、あらすじを聞いた時点からオリヴィエ・アサイヤス『アクトレス〜女たちの舞台〜』を思わせるものがあった。『アクトレス〜女たちの舞台〜』は、女優として成功するきっかけとなった作品に別役として出演することとなった主人公が、かつて自分が演じた役を務める女優との関係を通じて自分の人生を見つめ直すといった内容であった。『センチメンタル・バリュー』は、このようなフィクションという位相をずらした世界から自分を見ることで内なる葛藤を乗り越えようとする物語を多層的なベクトルでもって編み込んでいる。それをリフォームされる家におけるテセウスの船たる側面と重ね合わせている。
映画監督のグスタフは、妻と離婚してからはノルウェーを離れていた。しかし、家を取り戻すために戻って来る。母親からインスパイア受けた物語を作ろうと考えており、クライマックスを実家で撮る構想があった。父は舞台女優のノラにこのカリン役をお願いしようとするが断られる。そこで、アメリカ人女優のレイチェルを起用することになる。
母からインスパイア受けた物語(=フィクション)を軸に、グスタフ、娘たち、レイチェルで距離感が異なる。どの人物も直接的な当事者ではない。だが確かに存在した事実との距離を通じて歴史が紡がれていく。時代や登場人物は異なれども、軸は揺らがない存在として家が用いられているのだが、同じくカンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品された『落下音』と比べると、会話優先で映画的なショットに乏しく思える。
ここ最近、この手の映画はベルイマンと比較されることが多いが、大抵このような比較がなされる映画はベルイマン映画におけるショットの強さに乏しく、内なる世界の自問自答面で共通項が見出される。本作もベルイマンと言うにはあまりにもイメージが弱いように思えた。とはいえ、ここ2年で散見される家を中心に人間心理を描く作品の中ではマスターピースにあたる点に関しては異論はない。










