【チャールズ・バーネット特集】『マイ・ブラザーズ・ウェディング』居場所がないから走る

マイ・ブラザーズ・ウェディング(1983)
My Brother’s Wedding

監督:チャールズ・バーネット
出演:エバレット・サイラス、ジェシー・ホルムス、ゲイ・シャノン・バーネット、ロナルド・E・ベル、サイ・リチャードソンetc

評価:70点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

シアター・イメージフォーラムにて開催中の特集《チャールズ・バーネット エブリデイ・ブルース」》にて『マイ・ブラザーズ・ウェディング』を観てきた。ショーン・ベイカーに影響を与えた監督だと聞いたことがあるのだが、本作を観ると確かにベイカーっぽい作品であった。

『マイ・ブラザーズ・ウェディング』あらすじ

アフリカ系アメリカ人の日常と人間性を一貫して描き続け、アメリカのインディペンデント映画界に多大な影響を与えた映画作家チャールズ・バーネットが1983年に手がけた長編第2作を、2007年に再編集して完成させたディレクターズ・カット版。家族と友情、アイデンティティの間で揺れ動く労働者階級の青年の葛藤を悲喜劇として描き、黒人コミュニティ内の階級差や世代間の心理的な隔たり、社会的成功から取り残された若者たちのいら立ちを、日常の隙間から静かに浮かび上がらせる。

両親が営むクリーニング店を手伝う30歳のピアースは、将来の見通しが立たないまま漫然と日々をやり過ごしている。少年時代の仲間たちは刑務所にいるか、または既に死んでしまった。弁護士の兄が裕福な家庭の女性と結婚したことで、ピアースは居心地の悪さと劣等感を募らせていく。そんな折、刑務所から出所した親友ソルジャーと再会したピアースは、家族への義務感と親友への忠誠心の板挟みとなり、ある選択を迫られる。

日本では、特集上映企画「チャールズ・バーネット エブリデイ・ブルース」(2026年2月7日~、シアター・イメージフォーラム)にて、4Kレストア版で劇場初公開。

映画.comより引用

居場所がないから走る

『キラー・オブ・シープ』に引き続き、黒人のありのままの生活を通じて、フィクションとは異なる現実的な質感を表現している。『キラー・オブ・シープ』では酒屋の女性店員と黒人との小切手換金の場面を通じて差別を描いていたが、本作では人種限らず治安の関係から殺伐とした様子が描かれる。クリーニング屋に男がふたりやってくる。女店員はカウンター備え付けの拳銃に手をやるのだ。下手すると暴力に晒されるかもしれないから、店員と客との間に緊迫感が生まれる様を表現している。

映画はワッツ地区という広大だが、どこへも行けないヒリついた空間の中で追跡劇が展開される。この場面は非常に観応えがある。ふたりの男がターゲットを追いかける。横断歩道を前に追う者/追われる者が分断される。追われる者は塀をよじ登ろうとするが落ちる。追手が横断歩道を渡り始める。フレームの死角でもって宙吊りのサスペンスを生み出しているのだ。チャールズ・バーネットはロングショットも得意としており、小川を挟んだシンメトリーな構図で走る運動を爽快に撮る。だが、死もしくはコミュニティによって黒人たちの生活は雁字搦めとなってしまうのだ。実にアイロニカルである。