Bouchra(2025)
監督:Meriem Bennani、Orian Barki
出演:Meriem Bennani、Fatim-Zahra Alami、Yto Barrada etc
評価:65点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
FILM COMMENT誌の未配給ベストが発表され、謎のアニメ映画がラインナップにあったので観た。複雑なジェンダー的葛藤をアニメを介して描く異色作であった。
『Bouchra』あらすじ
Bouchra, a 35-year-old Moroccan coyote in New York documents her long-distance relationship with her mother in Casablanca, as they explore together the love, pain and secrets that unite them through calls and intimate conversations.
訳:ニューヨーク在住の35歳のモロッコ人コヨーテ、ブシュラさんは、カサブランカに住む母親との遠距離恋愛を記録している。電話や親密な会話を通して、二人を結びつける愛、痛み、秘密を一緒に探っていく。
動物を介してアイデンティティを探る
本作はVRChat的ヴァーチャル空間の質感で描かれている。日本のVRChatやVTuber文化の場合、「可愛いを纏いたい」といった単純な理由で男性が女性のアバターで活動したり、ボイスチェンジャーで女性になることが大半だが、海外のコミュニティだと性的マイノリティが自分のあるべき姿を提示できる場としてアバターを纏うケースが少なくない。本作ではモロッコ出身のクィアな主人公ブシュラが、オオカミのような存在を纏いサイバーパンクを彷徨うことで実存を確かめようとしている。その中で爬虫類と親密な関係となる。ここでも興味深いのは、日本の場合アバターは「可愛い」を探求するのだが、『Bouchra』では現実と地繋がりでありながら動物に横滑りさせたようなアバターとなっている。可愛くはないのである。そうしたアバターを観ると日本との異なる文化を感じ取ることができる。日本は「可愛いは作れる」とし、自分の欲望を具現化させようとする運動がアバターへ反映される。一方で、海外では「あるべき自分」を提示するものとしてアバターがあるような気がするのだ。ハイコンテクストな作品故、ジェンダー論の研究者サイドの見解を伺いたいところだが、意欲作として興味深く観た。












